第6章 いつまでも続く開国談義 出版関係者に物申す3 – 電子ブック開国論 (55)

もちろんこの為には、クリエイター側でも変わらなければならない。変わることも、その変化に慣れることも痛みを伴う。この場合には、例えば大手出版社に対する依存心を捨てることがそうだし、狭い日本の文化の中でしか受け入れられないコンテンツや描写手法というものを、より世界で受け入れられるものに変えていくということがそうなのかも知れない。しかし、市場はそこにあるのだし、日本の漫画家は世界には類を見ない高度な文化的生産者であると信じて疑わない。

新しい出版パラダイムの中では例えば漫画家と編集者、漫画家と原作者といったこれまでの関係の中でもダイナミックな変化が必要とされるのかも知れない。が、逆をいうとそこには大きなビジネスチャンスがあるということだ。日本では有名な漫画家でも(一部の例外を除き)世界ではほとんど無名である。日本では誰もが知ってるTVアニメでも、海外で誰もが知っているTVアニメなんて実際にはほとんどないのが現実だ。(日本のマスコミ「大本営」がどういう報道をしているかは知らない)これはつまり、「チャンス」である。日本のプロスポーツ選手の多くが世界を経験して強くなり、それを日本に持ち帰ったように、これから日本のクリエイターも世界でどんどん武者修行をして強く、逞しくなって欲しい。そうすることで閉鎖的な現状に変革をもたらすことができるというのは、スポーツにとどまらずビジネスや研究の世界では証明されている。

クリエイターよ大志を抱け!と筆者はエールを送りたい。
そしてたくさん儲けて自身の夢をどんどん叶えていって欲しい。もちろん前提条件は”NO PAIN,NOGAIN”(痛みなくして得るものなし)であるから痛みを伴うのは覚悟して欲しい、がそれは単なる使役労働を課せられるのとはまったく異なる次元の痛みであり、全て後の自分のためになる痛みである。何度も言うが電子出版という市場はまだ始まったばかりの市場であり、その市場規模がどれくらいの大きさになるかは計り知れない。

ちなみに、筆者のライフワークの一つである起業というテーマに立ち返って前述の弟の話に戻ると、実は単純な勤務時間や作業環境、従業員を抱えることのプレッシャーなど鑑みると、他者に一切依存せずに独立している起業家のそれのほうが、はるかに厳しいものなのである。時にはまったく見通しが立たないような状況に身を追いやられることもある。が、それはまったく異質のものであり、そこには大きな喜びが並存するのである。だから続けられるし、無理もできる。その喜びが何であるかをぜひ独立したクリエイター諸氏の目で確かめて頂きたい)

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立入 勝義 (Katsuyoshi Tachiiri) 作家・コンサルタント・経営者 株式会社ウエスタンアベニュー代表 一般社団法人 日本大富豪連盟 代表理事 特定非営利活動法人 e場所 理事 日米二重生活。4女の父。在米歴20年以上。 主な著書に「ADHDでよかった」(新潮新書)、「Uber革命の真実」「ソーシャルメディア革命」(ともにDiscover21)など計六冊を上梓。