【試写会レビュー】原発について改めて考えさせられる衝撃作「天空の蜂」映画公開!

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公式サイトより)
東野圭吾の問題作「天空の蜂」が今週末から遂に全国の松竹系映画館でロードショー!

これに先駆けて試写会が先月行われBLOGOSからご招待を受けた。
ちなみにこちらのブログで何度も触れているが、私は東野圭吾と同郷(大阪市生野区)であり、文筆業の大先輩ということもあり陰ながら応援させて頂いている。これまでの東野作品はエッセイや絵本も含めて最新刊「ラプラスの魔女」まで全作読破している。(これまた同郷の梁石日の作品は全作は読めていないのだが)
私は新しい仕事のため、8月6日まで日本にいたのだが、なぜそれまでにやってくれなかったのだと今回ばかりはかなり悔しかったのだがやむを得ず、海外在住の筆者に代わりライター「JIN」を派遣してみた。

試写会が行われたのは8月23日の正午から2時過ぎまで。会場は築地の松竹本社試写室。
(なんで今頃更新しているのか、と言われると立つ瀬がないが、いくら書きたくても書けない時もある。。いや、素直にごめんなさい)

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下記が先駆けて視聴したライター(これまた同郷)の生の声だ。ちなみにJINは原作を見ていない。それでも急な誘いに応えて行ってくれたのは感謝であるが、逆に原作を読んでない人の目にはどう映るのかが気になった。この作品、80冊を数える東野作品の中でも目立っていない方だが少数派である社会派作品(他には「さまよう刃」や「使命と魂のリミット」などがある)の中ではかなりの傑作である。作者自身がこの作品が映像化されるとは到底思えなかったとコメントしているように、私も映像化は諸問題で難しいだろうと思っていた。この作品が書かれたのは神戸震災後の1995年。なんと東日本大震災の16年も前である。筆者が読んだのも2011年くらいだったと記憶している。震災直後だっただけに、なんとも予言めいたこの作品に鳥肌が立つ思いがしたのを覚えている。

<あらすじはこんな感じ>
正体不明のテロリストが防衛庁に納入されるはずだった大型ヘリコプター「ビッグ・B」を強奪し、自動操縦で福井県にある高速増殖炉「新陽」の真上にホバリングさせ、日本中の原発の稼働停止・廃炉を政府に要請する。そしてその中にはヘリの開発者の息子が。。。

いまや原発はいうまでもなくドローンもあちこちで話題になっている時期。まさにさもありなんである。。反安保法制デモを続けるSEALDsの若者とかはこれをどう見るのだろうか。

<JINの試写会レビュー(ネタバレ少し含む)>

2時間16分の長さを感じさせなかった。中盤で江口洋介演じる湯原の息子救出劇があるからだろう。

原作を読んでいなかったので内容は知らないながらも、観ていておそらく助かるのだろうとは思いつつ、クライマックスの自衛隊員による救出に至るまでのシーンはなかなか手に汗握るものだった。邦画の子役はどうしてもへたな演技が気になることが多いが、今回は比較的よかった気がする。50代があと数年と、いまやトレンディというより大物の風格漂う江口洋介の演技には安心感があった。

その後は犯人探しと、ヘリコプター「ビッグB」をいかに、もんじゅ、もとい高速増殖炉「新陽」の上から動かせばいいのかを巡って事態が展開していく。

犯人の1人・綾野剛の捕物劇は、そこだけいきなり血生臭くて、シリアスでありながらも過激さはあまりなかったこの作品の中で異様な雰囲気。彼はこういう役がよく似合うなと感じた。

そして本木雅弘。そういえば自分はあまり最近彼を観たことがなかったと思ったが、終始暗い目をしているモックンによって、すごく全体が引き締まっていた。自分が原発に関わっていたせいで悲惨な目にあったり、日本政府や日本人に絶望したりしながらも、技術者として高速増殖炉の有用性は信じていたりする自己矛盾的な感じもよかった。

原発をワルモノのように扱いつつ、そこに関わる人たちの矜恃みたいなものも描きつつ、なおかつ今でも、というか今こそ身近に感じられる政府の対応とか、いろいろなシチュエーションのおかげで、妙にリアルな設定に思えた。そう考えると、これを95年に書いていた東野圭吾はやはりすごいなと素直に思えた。映画を観て、これだけ原作を読んでみたいと思わされたことはなかったと断言できる。

最後のシーンは明るく終えたいのはわかるけど、いるのかなと思った。でもこれがないと、やっぱり暗い余韻が強かったのかな。。。他の皆さんの反応が気になるところ。
以上

視聴者の反響がとても気になるところである。次回の日本出張までやっていてくれと切実に願いつつ。。。

しかし東野圭吾は多作であり、作品の多様性が素晴らしい。この本の前後に出ているのが「パラレルワールド・ラブストーリー」(SF)、「あの頃ぼくらはアホでした」(コメディエッセイ集)、「快笑小説」(コメディ短篇集)、本作、「名探偵の掟」(衝撃作 笑)となっている。もちろん連載とかで執筆時期はずれている可能性あるけど、こんなの並行して書けるなんて一体頭のなかどうなってるんだ!?

立入 勝義 (Katsuyoshi Tachiiri) 作家・コンサルタント・経営者 株式会社ウエスタンアベニュー代表 一般社団法人 日本大富豪連盟 代表理事 特定非営利活動法人 e場所 理事 日米二重生活。4女の父。在米歴20年以上。 主な著書に「ADHDでよかった」(新潮新書)、「Uber革命の真実」「ソーシャルメディア革命」(ともにDiscover21)など計六冊を上梓。