「起業家うつ」と発達障害

「起業家うつ」増加の実態、メンタルヘルスを損なう6つの事情(ダイヤモンドオンライン)

という記事を発見したので、それについて。ところで最近NewsPicksをやり始めて、こちらも毎日更新するようにしているので、当ブログ読者の皆さまには合わせてご確認頂きたい。 NewsPicks アカウント

表題の記事を読んで思ったこと2点


> 【要因4】起業家のADHD生涯罹患率は約3割
ADHDを含む発達障害は一般的には先天性と考えられてる。なので、これは少しミスリードかと。単に(私を含む)発達障害の人が起業家には多いのではないか。その原因としては、やはり杓子定規なサラリーマン生活が向いていないということがあると思う。筆者も、よほど集中していないと衆人環視の環境下でずっと机に座って作業できない。時折休憩を入れないと集中力が持続しないし、無理やり座っているととんでもない眠気が襲ってくる。その代わり過集中状態に入ると、それこそ寝食も忘れて延々と作業できる。


ただ発達障害を抱えている方がうつ病を併発する可能性は高く、また発達障害ゆえの起業時の苦労もあるため、「起業家うつ」との関連性はある。

>「失敗や弱さを許容する社会へ」
同感。やはり個人の債務保証や連帯保証人、信用機関調査システムなどがあまりにも起業家にとっては過酷でリスクを取ることを恐れたり、失敗した後の再起ができなかったりということに繋がっている。シリコンバレーのような「起業家風土」を支えるためにはシリアル・アントレプレナー的な存在がもっと増えないといけないし、それをサポートするエンジェル投資家も増えていかないといけない。

特に 信用機関のシステムに関しては、「昔携帯端末の分割払に失敗したから住宅ローンの審査に通らない」というような馬鹿げた「懲罰制」のシステムはやめて、アメリカのFICO(クレジットスコア)のような相対数値制を導入するべきだと強く感じる。

起業家は成功してこそなんぼ」という空気が問題で、これは逆に言うと「失敗したらざまぁみろ」ということ。毎日苦労して通勤しているサラリーマンの僻みが聞こえてくるようだ。成功する起業家が増えることで将来の日本の未来が明るくなると考えて、官も民も学もそれをサポートするべきだし、そもそも起業なんて一回や二回目で成功するほうがレアケースである。Paypalだってあのビジネスモデルにいたるまで二十数回ピボットしたと聞く。一回失敗して、自己破産して、クレジットカードすら作れなくなって、周りから信用失って、お金も借りられなくなって、という状態になったらどうやって再起しろというのだ。また、この記事で述べられているように、「追い風参考記録」的に一時期成功することもある。起業家の本質が問われるのは、その後にちゃんとリカバリーできるかどうか。

片方でスティーブ・ジョブズのような起業家を礼賛しながら、もう片方でお前だけ成功してけしからん、という空気があるとしたらそれは大きな矛盾だ。アメリカに四半世紀住んでみて思うのは、リスクテイカーに対する寛容さと成功した際に共に喜ぶ空気である。(例外はもちろんどこにでもある)

立入 勝義 (Katsuyoshi Tachiiri) 作家・コンサルタント・経営者 株式会社ウエスタンアベニュー代表 一般社団法人 日本大富豪連盟 代表理事 特定非営利活動法人 e場所 理事 日米二重生活。4女の父。在米歴20年以上。 主な著書に「ADHDでよかった」(新潮新書)、「Uber革命の真実」「ソーシャルメディア革命」(ともにDiscover21)など計六冊を上梓。