これだけ市場に電子ブックリーダー端末が溢れてきてはいるものの、やはり本命はKindleとiPadだ。根拠は言うまでもないだろうが、モノづくりのコンセプトがまったく違うからである。iPodVSMP3プレーヤーの時に起こったことと同じことが、今回は二強である。
中国を除いた世界市場においては、この二強がこれから世界でどんどん目立っていくだろう。アマゾンは本業が書店なだけに、電子出版において自分たちが苦労して築いた牙城をアップルに譲り渡したくはないと考えているだろう。そのために考えられるのはキンドルを改良することもそうだが、アップル端末を取り込んでいるのと違う通信キャリアと組むなどして、キンドル携帯などのプラットフォームを出すことが考えられる。もともとアマゾンはハード屋ではないため、ハードの開発にかかるコストとアップルという強力な競合がいることを決して過小評価はしてこないと思う。一方アップルは電子出版だけを見ているわけではなく、ユーザーを取り囲むためにサードパーティを惹きつける環境を提供し続け、どんどん魅力的なコンテンツを提供するだろう。つまり両者共に目指すところはユーザーの囲い込みであり、サードパーティ(電子出版の場合は出版社か書き手)の囲い込みである。つまり市場は消費者を中心に動いていくことを十分に理解しながら、ある程度の自由度を常に消費者にもたせ、あたかも自身で選択をしているかのようにみせつつ、大枠では消費者を自分たちが連れていきたいところに連れていく。特にアップルに関してこの行動があまりにも見事であり、行動が常に世界戦略である。世界中の大きな市場でこの両者の進出を許していないのは中国くらいだろう。(*注 アマゾンは8月28日にリリースされる新型キンドルで中国語フォントに対応することを表明した。中国市場に参戦するかは不明)
(Kindleは未進出、iPhoneはほとんど売れていない。詳しくは中国についての項目を参照のこと)並大抵の努力ではこの両者に立ち向かうことはできないのは誰の目にも明らかだ。では、そんな可能性がないかというと、まだ諦めてしまうには少し早すぎるのかも知れないと筆者は考える。では、日本が提供できるソリューションとは一体何なのだろうか。下記はこれまで筆者が考えてきた理想的な電子ブックリーダーのスペックだ。賛否両論あるだろうが、とりあえず具体的な形を示さないと議論にも進みそうにないので、非難を覚悟で敢えて提案してみたい。
まずはサイズ、これはできたら二段階くらいで考えてもらいたい。熱狂的なガジェットマニアとして知られる高城剛氏がブログで指摘しているように日本人のライフスタイルにあった手ごろなサイズ感が必要だ。
価格は最初は24800円、手ごろになってくるのは12800円を切ってくるくらいだろう。(*この文章は4月の時点で執筆されたものです)
ハードメーカーはシャープか東芝のように現在開発しているか、あるいは以前に電子手帳やPDAなどでいいモノをつくった実績のあるメーカー、あるいはカシオやセイコーなどの電子辞書メーカー3Gキャリアはソフトバンク。何故かと言うと経営者がまだ創業者だからだ。これから二大競合を迎えて戦っていくのに、迅速な意思決定ができないのは致命的である。
書店は今やアマゾンを追いかけて世界2位のイーコマース会社である楽天が適切だろう。代表の三木谷氏も創業者であることだし。(注: しかし、正直先日のBUY.COMは頂けなかった。筆者ならその後しばらくしてアマゾンに買収されたWOOT.COMを徹底的に押しただろう)
で、ハードはさておき中身の議論に入ろう。(続く)
2010 年 8 月 16 日
[…] 第3章 こんな端末が欲しい – 電子ブック開国論 (35) | 立入勝義の意力(いちから)ブログ - 北米発IT情報・電子出版・ソーシャルメディア 2010.08.16 at 10:36 AM 1 […]
2010 年 8 月 16 日
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