一つここで、日本のクリエイターに対して大胆な提案をしてみよう。これからはいっそのこと狭い日本だけを見ずに、自身の可能性を世界に求めてみてはどうだろうか。もちろんそのために要求されることは多いし、待っているのは茨(いばら)の道である。しかしながら、それでも座して死を待つよりはよほどいいのではないか。このために考え付くのが海外のベストセラーのリメイクである。この本を通して何度も伝えているメッセージだが、「温故知新」という言葉を私は大好きである。
そして日本のアニメでこのアイデアが成功しているいい例がある。それがドラえもんの映画版リメイクだ。ご存知のとおり原作者である藤子不二男、厳密に言えば藤本弘氏(F)が他界してからしばらく経つが、最近になって新しい声優陣で過去の映画を一からリメイクをしていて、なかなかの実績を収めているという事実がある。こういうリメイク作品は大人であれば懐かしく、そして子供たちには新鮮である。作者が死んでも作品が残り愛され続けるだけでも作者にとっては誉れのあることなのに、作品が「作り出されていく」可能性があるということはすごいことだ。また世界中で愛されているディズニーの作品群もその多くは西洋風の昔のおとぎ話や昔話の焼き直しが基本である。時間が経っても残っていくものというのは、やはり人類の心の奥底に普遍的に訴えかけるようなテーマをもっているから老若男女を問わず人々が魅了されるのだろう。
ではどのような作品をリメイクすればいいのか。これについては、一度マーケティングの大原則に立ち返ってみてはどうかと思う。つまり潜在顧客が最も多い市場を狙っていくのだ。書籍にとってこれはとりもなおさず世界中の「ベストセラー」をリメイクすることを意味する。そこで世界のベストセラーは何だと聞かれたら、それは3つある。
1.聖書(特に「経典の民」が共通して読む旧約のほうだ)
2.ウィリアム・シェークスピア
3.アガサ・クリスティ
参考リンク:
世界のベストセラー作家
世界のベストセラー本の一覧
である。聖書は作品として世界で一番売れている本(2位はコーラン)で、2と3は世界のベストセラー作家の1位と2位(あるいは同率1位)であるとされる。実に推定売り上げ部数が共に20~40億部とされる(ちなみに私も彼らの作品の大ファンである)。
これらのコンテンツを思い切ってリメイクしてしまうといいだろう。後ほど触れるが、ドストエフスキーの同名小説をモチーフにした「罪と罰」という作品の内容がすばらしく、こんな器用な芸当ができるのでれば、日本のマンガ家が手がけて老若男女のために「視覚化」されたこれらのコンテンツを、原作に沿う形と現代にあう形のリメイクに大きく切り分けてみる。そういう手法で質のいいコンテンツを創り世に送り出していってほしい。
もちろんこれは口でいうほどやさしくはない、なにせ対象がこれまでとまったく違う外国人でありこれまでの視点や前提がまったく通じないことになりかねない状況であるから、作り手の方としてもかなり変わる必要がある。しかし、ここは多少苦しくてもイノベーションと品質に妥協せず苦しいほうの道をいくべきである。競争相手に先駆けて自身の努力で大きな壁を一つ超えることができれば、そこから先には手付かずのフロンティアの一端を見ることができるのではないだろうか。志のあるクリエイターの方々には決して諦めずに、そして恐れずにその壁の先を目指して頂きたいものだ。