Tech Crunch 劇場

ツイッターでもつぶやいたのだが、ここのところIRSの監査対応に追われてかかりっきりになっていたおかげでブログの更新も滞ってしまった。ようやく終わりそうなのだが、さすがにマフィアさえも恐れるというIRSだけあって手強い。
いい執筆のネタができたとポジティブに捉えるようにしている(笑)

さて、先日タイム・ワーナー(旧AOLタイム・ワーナー)のアメリカの老舗テクブログサイトのTech Crunchを巡っては創業者のMike Arlingtonが辞任したことが話題になっているが、今度はエディターの一人Paul Carrがブログのエントリーで辞職を発表し、それに対して新CEOのErick Schonfold が公開書簡でそれを受理するという動きになっている。ここまできたら子供の喧嘩である。(最近のサムスンとアップル、そしてグーグルの争いもそれに似た様な趣があるが。。)

Paul の公開退職届
I’m Leaving TechCrunch. Here’s Why.

Erick からの返信
Paul, I Accept Your Resignation

Paulによると同じく同社に先日買収されたばかりの社会派ブログサイトハフィントン・ポストの代表であるアリアナ・ハフィントンがErick の選任をサポートしたという。このErick に対しては旧CEOのMikeが先週SFで開催されたTech Crunch Disruptの優勝者(Shaker)を決めるのに「Mikeの声は反映されていない」というコメントをしたことに対して「事実と違う」と反論。アリアナが上位にたったことで発生しているとMike が訴えた「記事の中立性が損なわれる」という部分についても反論があるようだ。

このTech Crunch劇場は今アメリカのソーシャルメディア界を震撼させている。
もとはMikeが創設したVC事業に対して、「メディアの中立性が損なわれる」という指摘をしたNew York Timesの記事が発端となりTCの立役者であるMikeの辞任という形で表面化したこの問題だが、正直トラディショナルメディアのやっかみという風に捉えられなくもない。ブログメディアをこれまでのメディアと同じ土俵に持ちあげようとするのはNYTほどの歴史のあるメディアのやることなのだろうか。大体、そもそもメディアは広告で成り立っている時点で「中立性」など損なわれているではないか。
また、記事の影響度という話をするのであれば、例えばエディターが記事を書くときには一人ひとりの401Kなどの年金プランの内容までチェックすべきだ、ということになる。

少し時間ができれば、この辺りしっかりまとめて記事にしたいと思っている。渦中の人であるMikeやSanta MonicaにいるAlexia あたりへの取材なんかもできたらいいのだが。

個人的にはPaul Carr の文章はエディターらしい語彙と表現に溢れており、皮肉たっぷりで非常によく練られたものだという印象がある。もちろん記事の影響力を知ってのものだろう。一方Erick の文章はいたって平易であり、何の面白みもない。そういうわけでコメント欄にはものすごい数の反響が寄せられている。英語の勉強にもなると思うので、一読をお勧めしたい。

PS: Mikeさん、Shakerの優勝に関わっていないというのだったら、そちらのほうがあなたの名誉のためだと思いますよ(笑)

立入 勝義 (Katsuyoshi Tachiiri) 作家・コンサルタント・経営者 株式会社 ウエスタンアベニュー代表 一般社団法人 日本大富豪連盟 代表理事 特定非営利活動法人 e場所 理事 日米二重生活。4女の父。元世銀コンサルタント。在米歴30年。 主な著書に「ADHDでよかった」(新潮新書)、「Uber革命の真実」「ソーシャルメディア革命」(共にDiscover21)など計六冊。