キンドル早わかりマンガと森祐治氏

すでにご覧になった方も多いかと思うが、なかなか面白いのでぜひご一読ください。私は自分史年表型SNS「ヒスティ」を一緒に(というかほとんど丸投げしてますが)運営しているスマイルメディア高橋誠さんのブログで知りました。

キンドル早わかりマンガ
キンドル早わかりマンガ

出版界の黒船あらわる!?“キンドル”をお試し!の巻 (引用元:リクナビネクスト テク総研)

また、先日の取材記事がネットに出ているかと検索をしていたら、以前森 祐治(シンク代表取締役/CEO)さんという方がキンドルのモデルについて日経産業新聞の「デジタル時評」というコーナーにて「ケータイ小説VS.『キンドル』」というタイトルで寄稿されていたということを知ったのだが、その中で森氏は「誰もがアマゾンを通じて簡単にキンドル向けに電子出版できうる」(引用)という未来の状況を的確に予測されていたという。この記事が日経産業新聞に掲載されたのは何と2年以上前の2007年12月のことだというから、驚きである。やはり分かる人には分かるものだと思い、森氏のことを少しリサーチしてみるとCNETのコラムがでてきたので、読ませて頂いた。なかなか只者ではないというのがすぐに分かるほど中身の濃い記事と的確な市場分析であった。経歴もさすがというか、超一流でそれも頷けるのだが、きっと日本では有名な方なのだろう。(この辺りこちらに住んでいると時差や温度差が出るのがつらいところである)

年明けということで、早速私がファンになった森 祐治さんがCNETへ寄稿した2009年の総括に関する文章へのリンクを下記に貼らせてもらうと共に感銘を受けた文章を引用させて頂く。

森祐治・情報経済への視点–パラダイム・ロストの2009年を振り返って (CNETジャパンコラム)

下記はトヨタがF1から撤退した理由の一つをイノベーションと絡めて説明したくだりである。

 日本人は「新しいモノが好き」ということで知られている。しかし、上記のトヨタのように、深いレベルでの決断を伴うイノベーションの受け入れは、意外とされていない。表面的な受容に限定されることが多いのだ。例えば、積極的にホワイトカラーレベルでITを取り入れるようになって10年強が過ぎたが、「清書マシン」や「表計算電卓」、あるいは「図表描画支援」以上の利用がどれほどなされるようになり、業務プロセスそのものの改善がいかほどになされたのか疑問だ。紙がペーパーレスにはなったものの、その利点を生かした構造そのものの見直しという点では甚だお寒い状況にあり続けているのではないか。

ご指摘のように未だにオフィスではMSの「オフィス」パッケージのソフトが幅を利かせているのがまぎれも無い現実である。MSはOSと一緒にこれらの業務用アプリと一緒に一般消費者を抱きかかえたのだ。ちなみに私は柔軟に対応できるようにとブラウザ(IE,FF,Safari,Chrome)はいくつか併用するようにしているのだが、最近はオープンオフィスも併用して使うようにしている。しかしさすがにエクセルだけは関数やショートカットの関係でなかなか他のものが使いづらく、最近買ったネットブックにもエクセルだけは導入しようかと本気で考えているほどだ。(ちなみにエクセルも2003が一番慣れていて、その先はGUIが変わってしまったため使いづらく生産性が落ちるから使わないようにしている)

そして、森氏は自身が本業とされているアニメコンテンツの業界においても継続したイノベーションが必要だという話をしてこうコメントする。

 もちろん、アニメには3Dは不要という意見もある。が、欧米の劇場向け作品のほとんどがCGとなり、立体視作品となっていく中、日本以外の市場での競争優位を築くためにも何らかの形で話題を取り込む必要があろう。例えば、手描きセル・アニメであっても、コンピューター処理を施し、自動的に擬似立体化することは技術的に可能だ。しかし、そんな対応は、ガソリンエンジン車の加速をよくするために電気モーターを添えるという発想でしかない。従来の自動車の延長線上にある漸次的イノベーションの結果であり、そもそもPHBやEVを作るために製造プロセスを発想から刷新してしまう、破壊的イノベーターには立ち向かえないかもしれない。

この漸次的イノベーションVS破壊的(本来はこれがイノベーションなのだが)イノベーションという言葉遣いが非常に巧みだと思う。確かにKAIZENが得意な日本人はイノベーションでさえノウハウで擬似的に生み出すことが可能なのかも知れない。就職の面接や「一般常識問題」にまで攻略本が存在する日本市場を思えばそれも理解できる。(みんながそれを読んで一様に準備してくることで面接官は簡単にその裏をかくこともできるのは、面接をする側であれば誰でも知っている事実だというのに)

では破壊的イノベーターであり続けるにはどうしたらいいのか。破壊的イノベーターはどのように努力を続けているのかというと、

 先のコンテンツやアニメの例を挙げたように、未来の方向性とマイルストーンを決め、その実現のためのデザインに注力していくこと。優れたプレーヤーこそ、日常に埋没することなく、常に新しいものを取り込んではいないか。そう、自らが常にイノベーターであり続けようと努力する(別に、自身が発明しなくとも、役割としてイノベーターであればいい)ことなのかもしれない。そのためには、定期的に自らの中に不連続なポイントを創り出していく努力が必要に違いない。それにはきわめて頑強な意思がなければなしえないだろう。

ということだそうだ。レギュラー(定期的)にイレギュラー(非定期)をつくりだす、いわゆるファジー(曖昧)理論やカオス理論とも相通ずるものがあるのかも知れないが、私が思うイノベーションを保つ秘訣の一つは「常に前提条件を疑う」習慣性だと思う。
切り取るのが難しいくらい完成された文章だったのでまとまった引用になってしまったが、秀逸なコラムなのでぜひともご一読いただき、みなさんの新年の目標設定あるいは方向転換につなげて頂きたい。

立入 勝義 (Katsuyoshi Tachiiri) 作家・コンサルタント・経営者 株式会社 ウエスタンアベニュー代表 一般社団法人 日本大富豪連盟 代表理事 特定非営利活動法人 e場所 理事 日米二重生活。4女の父。元世銀コンサルタント。在米歴30年。 主な著書に「ADHDでよかった」(新潮新書)、「Uber革命の真実」「ソーシャルメディア革命」(共にDiscover21)など計六冊。