第1章 発展途上国への支援ツールとして – 電子ブック開国論 (7)

筆者は学生時代にボランティアでアフリカに一時期滞在していたことがある。学生の頃から飢餓や砂漠化などの環境問題など様々な困難を抱える発展途上国に何らかの社会貢献をしたいという思いは強く、2007年にCharityGlobeというNPO団体を立ち上げたのもそういう経緯からである。(その後私の力不足で目立った動きができずにいるのは情けないことだが)この発展途上国支援という観点において、電子ブックリーダーは逆境に苦しむ人々に対してすばらしい贈り物となる可能性を秘めている。そもそもがエコな端末であり、発展途上国が必要としている書籍というリソースを共有することができるのだから、当然だ。

以前100ドルPCなるものが騒がれたことがあり、まだこれを実践している方々も多いので、読者のみなさんもご存知かと思う。しかし、PCはいまやネットにつながらなければ意味がないといっていいし、MSワードやエクセルなどに代表されるようないわゆるオフィススイートと呼ばれるビジネスアプリのようなものが入っていなかったり、ネットにつながらない環境だったりすると使用目的が半減するわけで、この点で筆者はPCよりも単体で目的が達成されやすい電子ブックリーダーだと考えている。筆者が滞在していたのはエチオピアという国の首都アジスアベバで、三ヶ月ほどの間その国の最高学府であるアジスアベバ大学でアフリカ地理の授業を聴講させてもらった。もちろんクラスにいる外国人は私だけ、学生食堂などで食堂する際にも外国人の姿はかなり目立ち、すぐに注目の的になった。ところがこの時の体験で印象的だったのが、地理の授業にも関わらずクラスには地図が一つしかなく、学生が誰も地図帳をもっていない。宿題などで必要な時には図書館に行くのだが、それでもいくつかしかおいてなく、またほとんどが改訂していない古いものを使っているため、勉強にも事欠くという始末だ。もともとはこの大学に編入しようとして願書まで出していたのだが、学部長との面接の際にはできるだけ学士はどこか他の国で取得して、修士課程で戻ってきて欲しいというようなことを言われて結局は編入が認められず、その間にロサンゼルスからUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)という大学への編入申請が受理されたという知らせが入り、結局またロサンゼルスに舞い戻ることになった。

しかし結果的には勉強という観点からだとこちらのほうが断然恵まれた環境であることは、いざ学生になってみると一目瞭然だった。UCLAの図書館は全米の大学の中でもトップ10に入ると言われている。メインのパウエル図書館を始め15の図書館があり、蔵書の数は800万冊超と国立国会図書館の図書の蔵書数に匹敵するような数である。またこの大学21は全米で商用インターネットの試験が最初に行われた四つの大学の一つであるため、インターネットラボが充実しており、当時知りうる限りでは近郊の他の大学よりも遥かに速い回線でつながっていたので、不思議に思っていたのだが今となっては頷ける事実である。(ちなみに当時のエチオピアでもインターネットが実はつながっていたのだが、56kbpsくらいのモデムでの接続(*フルスピードはでていなかったように思う)がやっとという感じだった)これらの施設のおかげで大学では充実した学生生活を送ることができ、後に帰国した際も大学で学んだスキルが就職に活かされたことは疑う余地もない。そのおかげで、結局アフリカに修士で戻る夢は今のところ叶ってはいないが、社会起業家としての貢献ででも何とか発展途上国の支援をしたいという夢は変わっていない。発展途上国では教育の問題が深刻であり、識字率向上のためにも十分な書籍や教材すら存在していないという事実をどうにかしなければならない。また地域によってはまだまだ電力も不安定なところが多く、何よりも端末供給後の余計な追加コストは彼らにとっては耐え難いものであることも多いのだ。この点で筆者は省電力のKindleのような端末がラップトップPCやiPadのようなタブレット端末よりも向いており、まずは電子ブックリーダーを経由して低コストで教材や本などの教育ツールを提供するのが先決なのではないかと考えている。

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立入 勝義 (Katsuyoshi Tachiiri) 作家・コンサルタント・経営者 株式会社 ウエスタンアベニュー代表 一般社団法人 日本大富豪連盟 代表理事 特定非営利活動法人 e場所 理事 日米二重生活。4女の父。元世銀コンサルタント。在米歴30年。 主な著書に「ADHDでよかった」(新潮新書)、「Uber革命の真実」「ソーシャルメディア革命」(共にDiscover21)など計六冊。

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