ブックマーク共有サービスの雄、Xmarks (旧Foxmark)がサービス停止を発表 ユーザーからは惜しむ声

今日は長女の9歳の誕生日だった。早めに家に帰って、家族で夕食を食べ、それからみんなを寝かしつけてからとある商談の場へ。
遅めの時間の商談が終わって、まだ体調悪いので寝ようかと思ったら表記の件に関するメールが。。。ソーシャルメディアブロガーを自認する身としてはやはり伝えずにはいられないこのニュース。日本でどれだけの人が取り上げるか分からないが、数年使ってきたユーザーの一人としては是非とも取り上げたいニュースです。

Xmarks は200万人以上の利用者に対して一通のメールを先程配信しました。90日後にサービスを停止するということを告知するものです。
Xmarks は異なるマシン間でブックマークを同期できるというサービスで、登場した時はかなり画期的なサービスとして注目を浴びました。その後順調にユーザーを獲得し、VCからの調達なども経ながら、サービス自体は無償で提供し続けてきながら収益化の道を模索していたようです。

メールには詳細はブログで、という風に伝えてあります。

(ユーザーに対して送られたメール全文)

ちなみにここで紹介されている代替案というのはコチラのページから参照できる。
何かと思えば、要は各ブラウザ(IE、FF、Safari、Chrome)の提供する補完サービスである。つまり競合がいなかったということだ。

競合もおらず、ユーザーは200万人獲得できていて、500万台のマシンにインストールされている。そして毎日3000人の新規ユーザーを獲得できているにも関わらず、サービスは停止せざるを得ない。これはまさにITベンチャーの非業である。

そして、このメールには「詳細」を説明しているとされるブログへのリンクが悲しく貼られている。

ちなみに同ブログにはユーザーから「お金を払うから続けてくれ!」といったコメントが続々と寄せられている。それだけユーザーに愛されたサービスだったということだ。コメントにもあるが、例えば一人から500円とって、100万人が残ってくれれば5億円である。それだけのリテンションがあるかどうか分からないが、この金額と回収できるブックマークのデータに興味をもってこの会社をサルベージするような会社は出てこないものだろうか。。。

タイトルはEnd of the Road for Xmarks、Xmarksの旅の終りに、とでも訳そうか。何とも悲しい物語である。

かなり長く内容の濃い文章なので、是非とも原文に触れて頂きたいが、英語が苦手な方も多いと思うので下記にかいつまんだ訳文を掲載する。

今これを書いているのはXmarks社にとってまったく普通の日曜日だ。同期サービスはいつも通り運営されていて、サーバーは500万台のマシンにインストールされている200万人のユーザーのアカウントをつつがなく管理している。今日はまだ終わってないないけれども、今の時点で本日3000人目の新規ユーザーの登録が確認された。

だけど、明日はまったく違う日を迎えることになる。なぜかって、エンジニアの一人が全ユーザーに対して90日後に我々のサービスが終わるというメールを一斉配信するためのスクリプトを走らせるからだ。

この投稿ではXmarksの物語をかいつまんでお話しようと思う。どんな風にして世界で最も使われたブラウザー同期サービスとなり、そして、にも関わらずサービスを中止しないといけなくなってしまったか。(原文では pulling the plugという表現が使われている)

長い原文を読みたい方は

初期

2006年にMozilla財団のチェアマンだったMitch Kapor氏のブックマーク同期を支援するためにプロトタイプを作成しました。当時は彼が利用している5台のマシンでFirefoxのブックマークを動機する方法がなかったため、その立場にも関わらずサファリの利用を強いられていました。

簡単にできたプロトタイプは彼を喜ばせ、他人が使えるようにもしてあげるべきだと言われました。それから彼はブログでそれを説明し、利用者はすぐに5000人に達しました。勿論この時はまだプロトタイプです。

当時はすでにウィキペディアがいわゆるクラウドソーシングという手法でそれなりの業績を達成していた時だったので、ブックマークの同期でも同じようなことが可能になるのではないかと思われました。いわば利用者のデータを基にしたウェブサイトのウィキペディアのようなもの、あるいはスパムフリーの検索エンジンなどです。そのためにプライバシーポリシーもきっちり策定しました。その結果2006年の10月にはFoxmark, Incという法人を立ち上げるにいたりました。

中間期

2007年はそのほとんどの時間を一般的なインターネットベンチャー企業が体験したような苦難を処理することに費やしました。開発やサポート、製品開発やエンジニアリングなど、ありとあらゆるチームを作りそれを運営しました。サーバーも目的のための専用サーバーに切り替えました。ユーザーが増えるにつれ、サービスをもっと堅牢で効率の良いものにする努力を続けました。この頃我々は同期の「科学と芸術」についてたくさんのことを学びました。クリスマスの頃にリリースした新しいクライアントとサーバーにそれらのすべてを注ぎ込んだつもりでしたが、ラボではうまく機能したシステムがなぜ本番では悲劇的な結果しか導きだせなかったのかを理解するのは簡単なことではありませんでした。ユーザーは怒り、サービスを元通りにするように主張しました。その後2週間に渡る努力の末、問題は解決しました。

新しいシステムでの見えない利点というのはブックマークのデータを匿名化して抽出したり集合したりさせることでした。つまり、これにより1億を超える、いわばブックマークの死体を基に何か新しい製品が作れるのではないかという考えに至ったわけです。結果は素晴らしいものでしたが、クエリーの用途があまりにも限定されていました。例えば、事実を見つけるのは非常に困難でした。しかし、特定のカテゴリーのウェブサイトを探したい場合などは驚くほどの結果を示し、しかもスパムの心配がありませんでした。例えば車の製造業者や優れた図書館のリストなどにおいては普通の検索エンジンの比ではなく、これは非常に希望的なものでした。しかし、その後の更なる実験でこれらがあまり意味のないことだという結論にいたりました。何故なら多くのユーザーは検索でリストを探しているのではなくして、特定の質問に対する答えを探していたからです。その他にも例えばグーグルの検索結果の中に我々の検索結果をしのばせるようなアイデアもありましたが、ユーザーからの結論は「複雑すぎる」というものでした。

2008年の半ば、この同期サービスは以前堅調な成長を遂げていました。特にFirefox3のリリースにより、それはさらによいペースになりました。この勢いを得て、我々は過去の失敗にも関わらずVCからの調達にも成功したのです。そしてJames JoaquinをCEOに迎えました。 「どこかに必ずスケーラブル(拡張性のある)ビジネスモデルがあるはずだ」そういう確信のもと努力を続けました。Jamesはまた我々の技術を検索エンジンという確立されたビジネスモデルの中で有効に使うことを提案しました。試行錯誤の末、いたって単純な計画にいきつきました。グーグルの検索結果にユーザーの声を反映させた「ブックマークのランク」を追加して表示するというものです。

Firefoxに含まれることになったMozillaのFirefox Syncサービスとの差別化を図るためにIEとサファリにも注力しました。これら三つの主要なブラウザーをシームレスにつなげる能力がカギだと思ったからです。この段階で、FireFoxを連想させる「Fox」を外すことに決めました。2009年の3月のとあるコンファレンスで我々はXmarksと名を変え、「よりスマートな検索」機能を紹介しました。Xmarks.comというサイトも作られ、ユーザーは幅広いトピックごとのトップサイトを見つけることができるようにもなりました。

そして、私たちはユーザーの反応を伺いました。最初の頃はかなり良い反応でした。新バージョンのユーザーはグーグルの検索結果に新しい「モノ」を見つけることができるようになり、Xmarks.comへのリンクをクリックしました。しかし、これもそう長くは続きませんでした。それから更なる実験を重ね、視覚化の部分にもどんどんこだわりました。ユーザーの食いつきはよくなりましたが、我々がビジネスを大きくする上で必要なレベルとは言えませんでした。

我々はその翌年、ことあるごとに我々のユーザーにとっても魅力的で我々にとっても収益となるような何かを探して「死体」の周りで八方手を尽くしました。SearchTabというサービスは、光を見そうなサービスの一例でした。その他の多くはラボの中でお蔵入りとなりました。SearchBoostサービスは広告主にとってはいいものでした。広告代を得る代わりに、我々は広告主の広告にマークを付け、ブックマークのランキングも表示するというものです。社内の実験では広告のクリック率は10%以上も伸びるという報告もありました。それを多くの広告主に見せてはみたのですが、多くが興味を示す中、究極的な結果は否定的なものでした。我々のユーザー数は彼らからすると取るに値しないものだったのです。

末期

2010年春までには、資金は底を尽きかけて、選択肢もほとんど残っていませんでした。我々は会社を買ってくれる相手を探し始めました。この3ヶ月間、あとほんのもう少しというところまで行きかけたディールもありましたが、結果的にはうまくいきませんでした。またXmarksをフリーミアムの同期ビジネスとして再興することも検討しましたが、その成功の見込もあまりなさそうでした。FFやクロームといったブラウザが自前で強力な同期機能を無料で提供してきている中、誰が一体このサービスに対価を支払うでしょうか。この過去4年間というもの、我々はこの同期サービスをずっと無償で提供してきました。投資計画も無効となった今では、サラリーやホスティング費用といったコストを支払う方法がありません。もはやサービスを停止させるしかありません。今のところ後90日と少しの間はサービスをキープし、その後はストップする予定です。

この過去4年間は過酷なものでした。私たちは無からそれなりの規模のビジネスを創り出し、ユーザーの生活を簡単にすることで喜ばれるようなごくシンプルなサービスを提供してきました。そしてその過程で経験した大きな失敗たちの中から多くのことを学びました。私たちはみなさんがXmarksに代わるサービスを見つけなければいけないことに対して本当に申し訳なく思います。しかし、簡単に見つかるところで他の選択肢があります。(推薦する代替サービスはコチラ

私はこれまでの荒波を共に通過してくれた投資家や、このサービスを大きなビジネスにしようと長い努力を続けてくれた同僚たち、そしてこのXmarksを33ヶ国語に翻訳してくれたローカライズチーム、そして私たちが道を踏み外したらすぐにそれを教えてくれながら支援を惜しまなかったユーザーの皆様にお礼を言いたいと思います。私は皆さんたちのことを忘れないでしょう。

ダグラス・アダムの言葉にもあるように、「さようなら、いままで魚をありがとう

Todd Agulnick
Co-Founder and CTO
Xmarks, Inc.

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立入 勝義 (Katsuyoshi Tachiiri) 作家・コンサルタント・経営者 株式会社 ウエスタンアベニュー代表 一般社団法人 日本大富豪連盟 代表理事 特定非営利活動法人 e場所 理事 日米二重生活。4女の父。元世銀コンサルタント。在米歴30年。 主な著書に「ADHDでよかった」(新潮新書)、「Uber革命の真実」「ソーシャルメディア革命」(共にDiscover21)など計六冊。

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  1. […] 先日のエントリーで翻訳文と共にお伝えしたブックマーク共有サービスXmarksのサービス終了に関する告知は世界のあちこちで大きな反響を呼んだ模様。 […]

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