CNET iPad初体験レビュー by 江島健太郎 / Kenn’s Clairvoyance

iPadのレビューは巷に溢れているが、ここまで多いとどれを読むのが正しいのかも分からなくなってくるかも知れない。実際には自分でもってみるしかないのだが、元インフォテリアUSA代表(そういえば以前「緑の」平野さんを友人の弁護士から紹介してもらったことがあったのを思い出した) の江島健太郎氏によってCNET JAPANに掲載された表記のiPad レビューは非常によく書かれていると思ったのでトラバでご紹介。

iPad初体験レビュー at CNET JAPAN

筆者が重要と思った点を下記に引用させて頂く。

やはり、ほんとうに大切なことは実際に自分の手で触ってみないとわからないもんだなぁと改めて感じました。

結論を先にまとめると、「新しい製品カテゴリを創造し定着させる力のある、革命的だが地に足の着いた素晴らしい製品である」と同時に「その革命性ゆえ、そのゴールにたどり着くまでにはまだ少し時間がかかるだろう」ということです。

以下具体的に、「期待以上に良いところ」「時間が解決するであろう課題」「時間がたっても解決しない可能性が高い課題」の3つに分けて挙げてみます。
期待以上に良いところ

* 画質(文句なしに美しい)
* 速度(何をやってもサクサク動く)
* バッテリー(ほんとに10時間持ちそう)
* 大画面+マルチタッチなので、複数人で一緒に操作できる
* 純正オプションのカバーで二種類の角度がつけられるのが秀逸
* 画面のローテーションを固定するハードウェアボタンがついている(ベッドで横になって使うのには必須)
* ソフトウェアキーボードが本格的な物書き以外には必要十分なレベルになっている

時間が解決するであろう課題

* カメラがない
* 指紋がベタベタつく
* iPhoneよりアプリを作るハードルが高い(制作コストが高くなる)
* 片手でもつにはやや重すぎる(ベッドで横になって使ってるとすぐに疲れる)
* ホームボタンが見つけにくい(誇張ではなくほんとに、いつも探してしまう)
* 今はタッチに依存しているカーソル移動・文字選択・コピペの操作をキーボードで完結したい
* マルチタスクがない(アプリケーションの「状態」がiPhoneよりも複雑なので、それを維持したい欲求は強い)
* Safariで複数窓を切り替えにくい(切り替えボタンは一番目立っていてよいはず、本質的にマルチタスクと同じ種類の欲求)

時間がたっても解決しない可能性が高い課題

* Flash非搭載
* Safariが標準に従ってない
* クラウドを活かせていない
* 母艦としてMacかPCが必要(単体で使えない)
* 16GB/32GB/64GBというラインアップがナンセンス
* App Storeの閉鎖性

上記の最初の課題群については筆者も大体同じ感想をもっている。話題のマルチタスクについては、今のところ筆者の使い方ではそれほど気にならないがそれはマルチタスクができない前提でしか使っていないからだろう。むしろ「ホームボタンが見つけにくい」というのが本当にその通りなのだ。

二つ目の課題群について。。。
Flash非搭載は、もしかすると時間(というか環境の変化)が解決してくれるかも知れない。筆者はこうした技術の専門家ではないので、それがADOBEが開発しているプラグインレスなのか、HTML5なのかは分からないが、簡単な意見をいうとモバイル対応のウェブサイト(/m)のように意外にiPad用に専門の対応をしてくるサイトが増えるような気がしている。(ちなみに筆者は電子出版のパートナーと一緒にすでにiPad用の電子雑誌サイトを構築中である) iPad がもたらす可能性としては、(それがアップルにとって良いか悪いかは別にして)iPhone に比べるとはるかに多くの「iTunes 依存型ビジネスモデル」をいくつも産み出すであろうということだ。簡単に考えられるのはマンガや動画の違法コピーのダウンロード販売や配信サービスである。アップルはこの点については十分に認識していると思うので、Flashを巡るAdobeとの対立の背景にはアップルなりの先読みがあってのことなのかも知れない。(詳しく知りたい方は電子出版SNSにてお問い合わせください ←宣伝)

クラウドを活かせていない、というのとラインアップがナンセンスという部分に関しては、なるほど、と思う部分もあるしちょっと様子を見たい、という気持ちも両方あるということで今のところは意見保留。

で、筆者も同じく強調したいのがこちら

* 母艦としてMacかPCが必要(単体で使えない)

これは本当にその通りだと思う。これはiPadが高機能なために発生するAwkward(中途半端)な部分がそうさせた新しい問題提起である。それだけこの製品は既存のアップル製品内のエコシステム(言葉が正しいかどうか分からないが、製品群全体の連携とネットワーク構成という意味)に影響を及ぼすということ。これはiPadが逆にiPhone や Mac Bookなどの同社の既存製品と競合してしまう可能性があるということと同じように、アップルが今回iPadを開発する際に抱えた大きな挑戦だったのではないかと思う。筆者はもともとのマックユーザーではないので、いまだにWindows版のiTunesしか使っておらず、その不便性たるやこの上ない。だが、家や会社にあるアップル製品の数はどんどん増えてきており、特にiPhoneとAppleTVはお気に入りだ。(IE9がHTML5をサポートするけどXPをサポートしないという発表があった時点で、もう一度マイクロソフトと決別する覚悟を強めた筆者には次にMac Bookを利用していよいよiTunesもMac版に移行しようかと真剣に考えている)

簡単に言うと、もはや iPad や iPhone をデスクトップやラップトップというオールドデバイス(言い切り)上のiTunesでコントロールすることに無理がでてきているということだ。実際に必要なのは江島氏のレビューからも読み取れるように、インターネット回線とHDD、そしてiTunesというソフトあるいはもっと簡単にいうと「管理画面のGUI」だけでいいわけだ。つまりクラウドソリューションが進化すれば、母艦は必要なくなるということで、市場は母艦の必要性を否定し始めていると思う。(正直筆者もこの点についてちょうど先日議論していたところだった) あるいは、段階的に考えるとむしろApple TV か江島氏のようにリビング据え置きのMini Mac かで十分に対応が可能なように思えるのだ。これはもはやネット家電の領域なので、次にアップルが目指すところはそこなのだろう。こうしてどんどんアップル製品が家庭内に溢れていくようになるというのが、本当の意味での「囲い込み」で、これを私は「垂直統合型モデルの水平展開」と呼んでいる。(勿論誰か他の人も言ってるかも知れないが)

でもこれって、本当はソニーがやりたかったことなんだろうなぁ。。。 江島さん、すばらしいレビューをありがとうございました!!みなさんもぜひ元のレビューをご一読ください。

立入 勝義 (Katsuyoshi Tachiiri) 作家・コンサルタント・経営者 株式会社 ウエスタンアベニュー代表 一般社団法人 日本大富豪連盟 代表理事 特定非営利活動法人 e場所 理事 日米二重生活。4女の父。元世銀コンサルタント。在米歴30年。 主な著書に「ADHDでよかった」(新潮新書)、「Uber革命の真実」「ソーシャルメディア革命」(共にDiscover21)など計六冊。