「男女格差、日本は過去最低105位、先進国最下位」を考える

gendergap

男女格差、日本は過去最低の105位 世界経済フォーラムが発表 (ハフィントンポスト)

元のデータは世界経済フォーラムウェブサイトで閲覧・ダウンロードできる。レポートの正式名称はGender Gap Report 2013 である。

GenderGap2014

確かに日本は105位、104位はカンボジアで106位はナイジェリアとなっている。

2013年 10月 25日 スイス、ジュネーブ – 国際男女格差レポート 2013によると、アジア・太平洋地域での男女間
の格差は 67%も縮小されているものの、経済的平等という点ではわずか 56%にとどまり、中近東および北アフリカ
諸国を除く世界の全ての地域と比較すると後れを取っていることが明らかになりました。

今回が 8回目となる国際男女格差レポートでは、136カ国を対象として、男女格差を縮小する能力について、経済的平等、政治参加、健康と生存、教育機会という 4つの分野でランキングを行いました。
フィリピンは、アジア・太平洋地域では最も目覚ましい進展を続けており、世界全体でも第5位となっています。フィリピンでの男女格差の改善は、レポートのサブ指数である、経済活動への参加と機会が向上したほか、政治参加に関しても高いスコアを示していることの表れです。

日本の順位は前回は101位だったが、今回は4つ下げた。また、日本に先駆けて女性を国政のトップに据えた韓国も3つ順位を下げている。これらの原因としては下記のような説明がされている。

日本は前回よりも順位を 4つ下げ、第 105位でした。これは、女性議員が減少したことにより、経済活動への参加と機会でのスコア向上が目立たなくなったことが主な原因です。
韓国も順位を 3つ下げて第111位となりました。韓国の場合は、労働人口の減少と、賃金平等に対する認識が十分ではないことが主な原因となっています。

(日本語版プレスリリースより抜粋)

ではランキング上位はどうなっているか。
まず5年連続の世界第1位と輝いたのはアイスランド、これにフィンランド(第2位)、ノルウェー(第3位)、スウェーデン(第4位)の北欧諸国が続き、いずれも男女格差が 80%以上も縮小しているとのこと。そして5位はアジアでトップのフィリピンで前回8位から躍進している。
筆者の住むアメリカは23位、隣国のカナダは20位、メキシコは68位である。

また、このレポートには経済水準(Income)別のランキング(P.17)もあり、これを見ると日本より下の国は
UAE(109)、韓国(111)、バーレーン(112)、カタール(115)、クゥエート(116)、オマーン(122)、サウジアラビア(127)
となっている。そう、韓国以外はすべて中近東のイスラム諸国である。
日本にいる友人からの情報によると、最近日本では海外在住日本人が異なる文化習慣に苦労しているという番組が流行っているそうだが、男女間格差が根強いイメージのあるイスラム圏と日本は実は順位で大して変わらないという驚愕の事実がここで明らかになると、笑うに笑えない。先進国最下位というのもなんとも情けない。

これをどう考えるか。
経済、政治、健康、教育、という観点を考えると日本では教育についてはかなり平等になっているのではないかと思われる。国民皆保険が進んでいることもあり、健康の観点でもそれほどスコアは悪くないのではないか。
では分野別のランキングを見てみよう

政治(POLITICAL EMPOWERMENT)= 118位
経済(ECONOMIC PARTICIPATION AND OPPORTUNITY) = 104位
健康(HEALTH AND SURVIVAL) = 34位
教育(EDUCATIONAL ATTAINMENT) = 91位

やはり健康と教育は水準が高い。つまり、女子の健康と教育環境は先進国水準を維持しているということだ。
しかし、その後がよくない。成人した後の女性を取り巻く環境は先進国水準からかなり離れたところにある。
これを日本社会はどう受け止めるべきか。

少子化が進む背景には、間違いなく女性を取り巻く社会環境の悪化にある。悪化、というよりも時代の潮流についていけていないのである。これではリベラルで先進的なアイデアをもち、行動力と言語力を持ち合わせたグローバル水準の女性は日本国内で活躍の場がないと感じるのではないか。北米に住んでいると、国際結婚や仕事を通じて海外に移住する女性がいかに多いかを実感する。これらの女性は、たいてい日本の閉鎖的社会には馴染まず、飛び出してきたケースに当てはまるようだ。(また高身長の女性が多いという特徴もあるように思うが、これも結婚を取り巻く環境に関係があるのかも知れない)

私自身が、シングルマザーによって育てられたからかも知れないが、私は日本社会における女性を取り巻く環境には多くの改善の余地があると考えている。政治の分野に関しては、マスコミがすぐに「アイドル」的な取り上げ方をすることにも問題があるように思うし、まだまだ封建的な旧世代の男性が長老として実権をもっていることが足かせになっているのかも知れない。経済面においては、日本の女性管理職者の少なさが圧倒的に目につく。世界銀行やディズニーというグローバル組織の中で、自分の目で実感してきたことだが、女性の管理職者は決して男性の数にひけをとることはない、むしろ男性より多いと感じるくらいである。それくらい女性がリーダーシップを発揮することは当然になってきているし、またそのための様々な環境が整えられていることは疑う余地がない。
逆にいうと、企業や組織がグローバル化しようとした際に、実力のある女性がいきいきと活躍できる場が与えられていることは必須要件となっているということである。(中東諸国についてはまったく別の話かも知れないが)

一方少子高齢化問題、そして管理職や参政など女性の社会参画について、日本の女性がそれらを目指していないからだという意見もある。一昔前「腰掛け」OLなどという何とも差別的な言葉があったが、安定志向を求める女性が多いからそれらは求められていないのだという考え自体が、いったいどれくらい真実を反映しているのだろうか。
筆者と同じ団塊ジュニア世代は40代に差し掛かったところだ。つまり、日本は新たなベビーブームを巻き起こすチャンスをほぼ失いつつある。少子高齢化と、人口減による国力、国際的競争力低下の問題を考えると、日本が抱える課題は本当に大きい。昨年末まで日本に1年半ほど滞在して働いた感想では、日本の働き盛りの女性はキャリアと結婚、育児環境などにおいて本当に多くの不安やストレス、課題に囲まれている。なのに、現状は一向に変わる気配がないどころか、あたかもそんな問題は存在しないように振舞う気風もある。

個人的には日本の女性はもっと声を上げるべきでないのだろうか、と思う。たとえば相変わらず車内やコンビニ、書店など子供への露出もたくさんあるところで、水着のグラビアや、アイドルの画像、下品な見出し記事などが氾濫している状況が不快でないわけがない、そう思って同僚や友人に訊いてみたところ、たいてい同じ返事が返ってくる。
曰く
「(環境がひどいことについて)そんなの当然誰も感じてることだけど、言っても社会は変わらないし、何よりそんな余裕は私たちにはない」
のだと。

そう、徳川幕府が長期政権を維持した際の標語「生かさぬよう、殺さぬよう」は今の日本社会にも根強く生き残っているのだ。しかし、問題はそれがいったい日本の未来のためのなのかということだ。日本の未来は時代を担う将来の世代のものであり、未来に結果が出るためには現在に変化の種がなければならない。そんなことを改めて感じさせられるレポートである。

<関連記事>

日本語プレスリリース
世界の男女間格差 日本は105位 (NHK)

立入 勝義 (Katsuyoshi Tachiiri) 作家・コンサルタント・経営者 株式会社 ウエスタンアベニュー代表 一般社団法人 日本大富豪連盟 代表理事 特定非営利活動法人 e場所 理事 日米二重生活。4女の父。元世銀コンサルタント。在米歴30年。 主な著書に「ADHDでよかった」(新潮新書)、「Uber革命の真実」「ソーシャルメディア革命」(共にDiscover21)など計六冊。

78件のコメント

コメントは受け付けていません。