このルールの背景にはいくつかの事情が垣間見えるのだが、複数アカウントを保有することは当初はまったく何も問題ではなかった。パブリックドメインのコンテンツをアップすることはAmazonが警戒してくるだろうことは分かっていたし、最初は広い門戸もいずれ狭くなるだろうということを予想して当社では(前提条件である)銀行口座の数だけのアカウントを開設した。また当時複数の会社を経営していたのでそちらの口座も利用して一応口座だけは開いた。(結局今まで使えていないのだが)結果として前述したようなことから、「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」と言わんばかりに見せしめのように該当しないコンテンツ(一時は「漢字」の著作権についての釈明を求められたことまであったのだ!)以外のコンテンツの出版も一応に差し押さえられて、その状態が長いときには数週間から数ヶ月続くのだからたまったものではない。
Amazonが出版社のアカウント別にフラグを立てて厳しく「お灸を据えている」のは疑う余地もなかった。(著作権については後ほどチェックザボックスシステムという自己申告制に移行したので少し緩やかになったのだが実質は何も変わっていない)複数アカウントを保有すること、いわゆるマルチアカウントはこういう問題で電子出版を主とする事業展開をしている電子出版社にとっては死活問題だったのである。そしてもう一つの問題が言語の問題であり、これは本当に痛かった。しばらくしたらフォントを増やすのでその時をお待ちください、というメッセージを受けたのが1月で、それから何の音沙汰もない。これらはもちろん迫り来るAppleのiPadに対しての対応策だったわけで、Amazonは一時期矢継ぎ早に対応策を講じてIRをどんどん更新していた。ずっと張り付いてチェックしている筆者もさすがに目をむくような意思決定のスピードだった。アメリカの上場会社は下手をすると日本の上場会社よりもはるかにコンプライアンスが厳しいので、よほどの意思統一がなされているのか、事前に周到に仕込まれているのか、あるいはその両方であることは短期間とは言え日本の上場会社の子会社を任されてJ-SOXの対応などを社内で検討したことがあるのでよく分かった。
この後も強硬な姿勢を崩さないAmazonとのトラブルは幾度となく続いたのだが、紙面の都合で割愛することにする。実際にやり取りを体験した身としては、Amazonがこうしたクレーム処理をする際に執っている匿名性のメールのやり取りが非常にずさんに見えてしまう。何しろやり取りをしている相手の名前も分からなければ、個別のメールアドレスが手に入るわけでもなく、また電話しようにもどこに電話したらいいのか解らない、といった具合である。
また一気に世界展開をしたKindle2(国際版)の時に期待して、まったく裏切られた事実の中にマーケティングデータの不透明性がある。誰に売れたかまでは分かる必要はないが、地域性とかどういう年齢だとか、といった簡単なデータくらいは出版社に与えて欲しいものだ。そうすることにより間違いなくコンテンツの質を向上させることにもつながるのだから。現状のシステムではどこの国の人間が買ったのかも分からないので、開いた口も塞がらない。アマゾンと出版交渉をしている大手出版社があったらその辺りを十分に注意するように忠告したい。そういうデータは全て巨大マーケティング会社のアマゾンが保有して彼らの良いように使われるのみだ。(もっとももともと書籍の場合も誰が買ったのか分からなかったので、構わないということであれば話は別だ。はい、そうですかという他ないであろう)そしてアマゾンは自身のみが無料で販売できるようなシステムを即刻排除し、本当に通信費を自前で負担しているのかどうかをもう少し透明にするべきだと声を大にしていいたい。
(これまでにLMDPがKindleStore上で出版したコンテンツのリストはコチラ)
これ以外にも下記のようなコンテンツが出版可能である。
電子出版で作成可能なコンテンツ例
既存の出版物(一般書籍、文学書、新書、学術書、教科書、雑誌、絵本、児童書、教
材、写真集、アート本、ロマンス本など)
マンガ(メジャー/同人)
論文・学術関連の調査資料
古典、パブリックドメイン文学、ネット上のコンテンツの二次利用
エンタメ関連(歌詞・オリジナル字幕・脚本・脚注・映画原作)
掲示板、ウェブ連動コンテンツ、携帯小説
リアルタイムコンテンツ(ニュース、ゲームの必勝法、意識調査)
情報・資料・統計・辞書・地図・年表
パズルゲーム
言語学習、資格取得、テスト対策
ゲームブック、ファンタジー系
ニュース、個人および商業ブログ
アート関連(作品集、イラスト集、ポートフォリオ、写真集)
自費出版
アナログ物のアーカイブ化出版
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