ブログをしばらく書いていない時期というのは、不思議と「何かがずれている」感覚がある。
仕事は回っている。人にも会っている。それなのに、どこかピントが合っていない日々が続く。そういう時に限って後から振り返ると、「あ、あの頃ブログ書いてなかったな」ということに気づく。これはもう何度も繰り返してきたパターンで、過去記事を見直すたびに苦笑いする。
書くことは私にとって、原点回帰の行為なのだと思う。
書くことをやめていた時期のこと
このブログを長く続けてきた中で、休載の時期が何度かあった。理由はそれぞれで、忙しかったり、心が折れていたり、「何を書けばいいかわからない」という漠然とした停滞感だったりした。
その間も、外から見れば普通に生活していた。仕事の締め切りをこなし、人と食事もした。ただ、自分の内側で何かが堆積していく感じがあった。処理されないまま積まれていく感情や考えが、少しずつ重しになっていくような感覚とでも言えばいいか。
書き始めると、それがほぐれる。
最初の一段落を書いただけで、「あ、自分はこういうことを感じていたのか」と気づく瞬間がある。頭の中にあった霧が、言葉にした途端に輪郭を持つような感じだ。これは比喩でも精神論でもなく、心理学的にも説明がつくらしい。
「書く」と頭の中が整理される、という話
テキサス大学の心理学者ジェームズ・ペネベーカー博士は、感情や体験を言葉にして書く「エクスプレッシブ・ライティング」の研究で知られている。彼の研究によれば、書くことを続けた人は幸福感が高まり、ネガティブな感情が減ったという。さらに数週間から数ヶ月のスパンで見ると、うつや不安が改善し、ストレスが穏やかになる傾向も報告されている。医者にかかる回数が減ったというデータまである。
また、思っていることを書き出すことで脳のワーキングメモリの機能が向上し、自分にとって大切な記憶を長期にわたって定着させやすくなるとも言われている。
もちろんペネベーカー博士の研究対象は「日記やジャーナリング」であり、ブログのような公開の文章とは厳密には異なる。ただ、「言葉にして外に出す」というプロセスの本質は同じではないかと、個人的には思っている。
漠然とした不安や感情が「言葉」という形になることで、頭の中のカオスが整理される。書いている間に自然と客観視が生まれる。これは私自身、何年もブログを書いてきて実感していることだ。
自己開示が「自分を知る」ことになる逆説
心理学者のシドニー・ジュラードが提唱した「自己開示」という概念がある。他者にありのままの自分を開示することで、信頼関係が育まれるというものだ。
また、「ジョハリの窓」というモデルも面白い。1955年にジョセフ・ルフトとハリントン・インガムが提唱した自己理解のフレームワークで、自己開示によって「秘密の窓」が小さくなり、「開放の窓」が広がるとされている。誤解が減り、安心感が増す。
ここで少し逆説的なことを言ってみる。
自己開示は相手のためだけでなく、書いている本人が「自分を知る」ためでもあると思う。ブログに何かを書こうとして初めて、「自分はこのことをどう思っているのか」を真剣に考える。まとめようとするから整理できる。これは「内省的自己認識」と呼ばれるもので、心理的な成長において重要なプロセスとされている。
書く前には気づかなかった自分の気持ちが、書き終わった後に見えてくる。これはブログを続けていて何度も経験してきたことだ。
読んでいる誰かへの贈り物になっている可能性
自分の経験を書く、ということは、同じような経験をした誰かに届く可能性がある。
「みんな同じように悩んでいるんだ」と知るだけで、不安はずっと小さくなる。これは自己開示の持つ、心の距離を縮める力だと思う。情報だけが並んだまとめサイトより、生の体験談や意見が乗っている記事のほうが共感を呼ぶ、というのは多くの人が感覚的に知っていることで、実際にそういう声も多い。
私がブログを書いていて最も嬉しかった瞬間の一つは、「あの記事を読んで救われた」という一言をもらった時だ。大した記事ではなかった。ただ、ある時期の自分の迷いや失敗を正直に書いたものだった。それが誰かの役に立ったとしたら、書いておいてよかったと心底思う。
知識や経験は、自分の頭の中にしまっておくだけでは価値を生まない。ブログという場所に出しておくことで、それは時間を超えて誰かに届き続ける。
それでも「誰も読まない」不安について正直に言う
とはいえ、書き始める時の一番大きな障壁は、「どうせ誰も読まないんじゃないか」という気持ちだと思う。これは正直に言うと、私も感じることがある。
個人ブログは収益化という観点からSEO論やアフィリエイト論では否定的に語られることが多い。YouTubeやSNS全盛の時代においてもはや日記ブログに需要はないという論調もあるだろう。しかし実際には「個人サイトや日記ブログは普通に需要がある」という見方もある。Googleの検索においても、実体験が評価されやすくなってきているという話がある(ただしこれは断定的に言えるほど原典を確認できているわけではないので、あくまで傾向として聞いていただきたい)。
人がブログを読む理由として、「詳しい情報が欲しい」だけでなく、「書いている人に興味・親しみを感じる」というものがある。個性や人間性が読者を引き付ける、という感覚は本当のことだと思う。
そう考えると、「誰かに読まれるかどうか」を書く前から心配しすぎる必要はないのかもしれない。
結局、書くのは自分のためでもある
ブログを続けてきてわかったのは、書くことは読者のためでもあるが、書き手の自分のためでもある、ということだ。
経験を言葉にする過程で、出来事は「意味のある物語」として再構成される。ただ「つらかった」で終わっていた記憶が、書くことで「あの経験があったから今がある」という形に変わることがある。これはエクスプレッシブ・ライティングの本来の目的——自己治癒のプロセスの促進——にも通じる話だ。
完璧な文章でなくていい。素直な心の声を記すことが重要だと、ペネベーカー博士の研究でも示されている。うまく書こうとしすぎると、かえって本当のことが書けなくなる。
私が(意図せず)間隔を空けながらもブログを15年以上書き続けているのは、誰かに有益な情報を提供したいという気持ちもあるが、何よりも「書いている間は心身のバランスがよく、前向きに生きられる」という実感があるからだ。これは誇張でも自己暗示でもなく、何年もかけて確認してきた事実として言える。
書くことは、自分を取り戻すことだった。
そういう意味では、このブログは私の原点回帰の場所であり続けている。また何か書こうと思った方がいれば、ぜひ気軽に始めてみてほしい。うまく書けなくても、続かなくても、それはそれで一つの経験として残る。
そんな「物書き」の私にとって今日届いた同郷の大作家東野圭吾の訃報は言葉に表せないくらい辛いものだ。彼の作品についてはこれまでも触れてきたが、また筆を改めることとする。ー合掌ー
参考リンク
- 個人ブログを書くメリット17個と始める前に知っておきたいデメリット
- ブログの利点は、自分のペースで情報発信をしながらスキルや人脈、収益を得られることにあります。|VLOGMAP
- ブログのメリットとは?副業としての利点や本業に与える影響を16項目で解説|ワプ活
- ブログのメリット10個を解説【人生が豊かになる4つの理由】
- 個人ブログのメリット13選&デメリット5選を徹底解説!後発組が稼ぐコツも紹介 – ブログ起業の教科書
- 初心者向けにブログを始める12のメリットを紹介!デメリットも解説 | セイコログ
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