第2章 コレクター心理はどう変化する?ブクログって知ってますか?– 電子ブック開国論 (26)

(注:この項はブクログがパブー(電子出版サービス)を開始する前に書かれたものです)

電子ブックに関するディスカッションで時折登場する話題の中にいわゆる「コレクター心理」というものがある。これは例えば本やマンガが本棚に並んでいること自体に満足感を感じるというものであり、またこれは時には他人に対する優越感であったりもする。本の時代は長く続いているので、もちろん古書の市場やビンテージマンガ、絶版本のコレクターなども存在するわけである。彼らの言い分としては、電子ブックだと「所有している」気がしない、というわけだ。もちろんいつまでこういう意見が一般的であり続けるかは分からないが、筆者も俗に言う「本の虫」として育っただけにこの心理はよく理解できる。

何を隠そう私も、誰かの家にお邪魔した際に本棚が見えるとすぐに中身が気になってついつい除いてしまう。本棚は大抵の読書家にとって自分のアイデンティティともいえるほどの意味をもつものだ。しかし、この一方、例えば都内のワンルームマンションに住んでいる、私の高校時代からの親友のように増え続けるマンガの蔵書に部屋のスペースがどんどん占有されていき、置き場に困っているという人も多いと思う。このことを考える度に筆者がいつも思い出すのがブクログというサービスだ。これはペーパーボーイという会社の家入さんという社長さんが独自にスタートされたサービスで、立ち上げは2004年。ブクログでは仮想本棚を作成して、そこに自分が過去に読んだ本を登録すると、アマゾンから画像を引っ張ってきて画面に表示される。その後、読後録やレビューを書くのだが、アフィリエイトやブログパーツの機能もあり筆者はかなり昔からこのサービスを地道に愛用している。誰かに見せるため、というでもなくほとんどは自分のためだ。

管理人のブクログ(非定期更新)
管理人のブクログ(非定期更新)

ご覧になられた方はApple のiBooks のプレゼンテーションを思い出されるかも知れないが、ブクログはこのサービスをずっと前からやっていた。同じような時期にアメリカには似たようなサービスがなかったので、私自身が(なんとなく名前が似ているので勝手に親近感をもっている)家入氏に連絡してアメリカでもスタートしませんか、という風に持ちかけようと思っていたくらいだ。日本では最近「本棚.ORG(http://hondana.org/)」などの類似サービスも始まっているので、画面くらいは見られた方は多いかもしれない。このようなインターフェースでもって実際に本をもっていなくても、コレクター心理を満たすことが可能になった。もちろん実際にどうしても紙でもっておきたいというものがあれば、それを止める理由は一切ない。要は使い分けが生じるだろうというだけのことだ。例えば先日角川ホールディングの代表角川暦彦氏が出版したクラウド時代と<クール革命>は同書が一般書店で販売されるまでの間インターネット上にて完全無料で公開されていたのは記憶に新しい。私も海外在住の身でありながら無料公開の恩恵にありつけたので読ませてもらったが、あまりの面白さに読み終わった後には逆に購入を決めてしまい結局日本出張の折に普通に書店で一部購入させて頂いた。DRMなどの議論が動画や音楽などに比べて書籍においてあまり意味をなさないのではないかと思われる理由の一つがこのようなコレクター心理であり、また本というメディアがこれまで一番デジタル化がしやすい媒体であったのに最も遅れてでてきたということであるのではなかろうか。

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立入 勝義 (Katsuyoshi Tachiiri) 作家・コンサルタント・経営者 株式会社 ウエスタンアベニュー代表 一般社団法人 日本大富豪連盟 代表理事 特定非営利活動法人 e場所 理事 日米二重生活。4女の父。元世銀コンサルタント。在米歴30年。 主な著書に「ADHDでよかった」(新潮新書)、「Uber革命の真実」「ソーシャルメディア革命」(共にDiscover21)など計六冊。

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