近未来のソーシャルニュースネットワークを考える(1)

突然だが、時代は新しいメディアを渇望していると思う。その背景にあるのは勿論、昨今騒がれているウェブ(あるいはネット)の「リアルタイム化」現象がある。GoogleはLatest(日本語では最新)検索を始め、TwitterのようなインターフェースのBuzを始めた。また、まだ日本では始まっていないようだが、Social検索というのも強力なツールだ。これはGmailやTwitterのコンタクトやGoogle Profileからのリンク、そしてその一段階先のつながりまでを社交グループと仮定し、その中での検索結果などを自身の検索結果に反映させるものである。

筆者はこれから「膨張したウェブが縮小」する現象が起こるとみているが、それはネットの世界そのものが小さくなるということではなく、自身に関係する部分の情報が厳選、あるいはフィルタリングされていくことで小さくなってくるということである。その中で大事な要素として “ピア”の存在があるとみている。(これは例えば検索結果の精度を上げるために、不特定多数の意見よりも自身の周りにいる人物(つまりピア)の意見をより評価するもので、リアルの世界ではもちろん誰しもが行っていることである。一時は隆盛を極めたP2Pファイル交換ツールも、いつの間にやら特定の人物同士がクローズドな環境でファイルを共有しあうようになったのだが、これはとにもかくにもこのほうが安全でかつ効率的だからである)このピアはいわばまっとうな「ギブアンドテイク」が成り立つ者たち同士の本当にクローズドなグループなので、部外者が中に入るのは難しい。一般的には誰かの紹介か、貢物(ファイル交換の場合は上質のコンテンツなど)ややり取りの姿勢などを通してグループのメンバーに自身の価値を認めてもらうしかない。これはまさに現実そのものである。

ではメディアの世界はどうか。これまではポータルとして揺るがぬ地位を築いてきたYahoo!やMSNなどのポータルサイトも最近躍起になってリアルタイム化したツールやアプリを提供しながら顧客の確保に努めているようだ。それも当然で、これまでは雑誌や新聞などの紙媒体のメディアがスピードに追いついてこれないということで、ネット上のマスメディアとして君臨してきた彼らも自身のスタイルが、すでにこのリアルタイム化の波に乗り遅れかけていることに気づいているからだ。これらのポータルサイトに対抗するニュースメディアポータルとしての本命がDiggなどに代表されるSocial Newsサイトであった。しかし、やはり匿名あるいは非実名のポストが大半の状態で、かつその記事を書くものもプロに限らないとすれば、必然情報の品質は下がってくる。ここで厄介なのが、それがポータルであろうがソーシャルメディアサイトであろうが、ほとんどのサイトは利益主導で運営されている、つまりアクセス数を稼いで広告売上を増やしたいというのが一番のモチベーションであるということである。

ニュースを閲覧に来るビジターの数 = サイトの価値 = 広告媒体としての価値

といった構図が成り立つのはもはや多くの方が理解していると思うが、要はユーザが記事目当てにやってくるのを利用して、サイト自身が広告媒体としての価値を高めている、そういうことだ。そこで、改めて着目したいのがここでいうユーザには利益が落ちる仕組みにはなっていないということだ。儲けるのは常にそれを運営している会社になる。上場益が出たとしても、ほとんどの場合はそれは創業者が手に入れる仕組みになっている。今年のフォーブスの長者番付に出た二人の30代のビリオネヤーは共に日本最大のSNSの創業者だ。 (に続く)

立入 勝義 (Katsuyoshi Tachiiri) 作家・コンサルタント・経営者 株式会社 ウエスタンアベニュー代表 一般社団法人 日本大富豪連盟 代表理事 特定非営利活動法人 e場所 理事 日米二重生活。4女の父。元世銀コンサルタント。在米歴30年。 主な著書に「ADHDでよかった」(新潮新書)、「Uber革命の真実」「ソーシャルメディア革命」(共にDiscover21)など計六冊。

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