サンディエゴのプリウス事故 その後

今週でもっともブルーな気分にさせてくれたのが、このニュースだったが、ある程度予想通り、というか米国内には両極端な対応が発生している。

一方では1000万人規模での集団訴訟が騒がれる中、もう一方では原因をアクセルとブレーキのふみ違いと主張する学者の声明(よくみたらうちの大学の教授だったが)がでたり、挙句の果てにはメディアで「トヨタは好きだけど、プリウスにはもう絶対乗らないね!」と叫び続けたJames Sikes氏を糾弾するサイトが立ち上がり、ひたすらフォローアップを続けている。やれ彼には70万ドル以上の借金があって実はプリウスの支払いは5ヶ月以上も滞納しているなど、過去にも訴訟経験が多いだの、挙句の果てにはアダルトビジネスとの関わりまで指摘され始め、時折見られる米国版の世論「炎上」状態である。

やれやれ、と思いながら筆者も念のためメンテナンス時期にきた2008年プリウスを近くのディーラーに持ち込もうとしているところなのだが、アメリカのフリーウェイをプリウスでしょっちゅう走っている感想からいうと、実は非力(1800cc/77ps)で重たい(1300kg!)プリウスで時速90マイルを出し続けるのはかなり難しい(モーターが駆動していないとなお更)し、ニュートラルに戻す方法くらい、しばらく運転してたら分からないわけがないとは思う。
また、最終的なストップ方法がサイドブレーキに電源OFFだってことくらいは運転している人なら誰にでも分かることで、大体そんな緊急時に警察(911)に電話するか!?というのが正直な疑問である。過去に同じようなスピードでフリーウェイを走っていて急に後ろのタイヤがバーストしたことがあるが、壁にぶつからないように車を止めるのに必死で警察に電話するなんて思いつきもしなかった。ちなみに最終的には目の前のパトカーにぶち当たる形でストップしたこのプリウスがほとんど破損しているように見えないのは(CNNの再現ビデオによると)ぶつかる直前のスピードは0mpgだったからだ、ってすでに止まってるんじゃないか、と。

いずれにしても、何故かこれまでずっとトヨタ車に乗り続けてきている筆者としてはまかり間違っても今回の件でトヨタが北米から撤退、などということにはならないようにと切実に願っている。(もちろん被害者感情を考えれば、手放しで歓迎するという訳にもいかないので最善策を講じてもらう必要はあるかと思うが)

立入 勝義 (Katsuyoshi Tachiiri) 作家・コンサルタント・経営者 株式会社 ウエスタンアベニュー代表 一般社団法人 日本大富豪連盟 代表理事 特定非営利活動法人 e場所 理事 日米二重生活。4女の父。元世銀コンサルタント。在米歴30年。 主な著書に「ADHDでよかった」(新潮新書)、「Uber革命の真実」「ソーシャルメディア革命」(共にDiscover21)など計六冊。

2件のコメント

  1. ケントパーク
    2010 年 3 月 14 日

    トヨタの一連の事件に関しては、背後に、「トヨタを叩くことによって、相対的に、アメリカ車の販売シェアを取り戻す」というアメリカ側の強い意図があるのを感じてしまい、ニュースを聞くたびに、げんなりしてしまいます。
    イルカ、クジラ、マグロと、何だか日本は、叩かれっぱなしですけど、一体、どうしてなんでしょうかね・・・

  2. will
    2010 年 3 月 14 日

    コメントありがとうございます。
    最近のアメリカは対中国にせよ、INS(移民局)にせよ、IRS(税務署)にせよ、なんだかヒステリックで我を失っている感じがしますね。日本が叩かれている政治的な背景は、やはり基地移転の問題と最近日本がアメリカではなく中国に歩み寄ろうとしたことに対するけん制という見方が強いです。グーグルの問題も実は裏にあるのは自動車の問題だとか。だけど、トヨタを叩いてもトヨタに乗ってる人がアメ車に乗り換えるってのは考えにくいんですよね。雇用も同じで例えばH-1Bの発給を厳しくしても、日本人を雇おうと思ってる人が代わりにローカルを採用するかというとまたそれは違うという話が。

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