第4章 電子出版がもたらすソーシャルメディアの夜明け3 – 電子ブック開国論 (40)

しかしこれと同時にブログには書くことから本人の内容が丸裸にされると言っても差し支えないくらい諸刃の剣的な要素をもっていることも見逃してはならない。文章力といった分かりやすい部分に始まり、提供する情報の精度から外部のURLのリンクを貼ったり画像や動画を貼り付けたりするデザインの部分まで、本人の力だけが全ての世界である。普通の書籍では編集者やゴーストライターというのも存在するのも一般的であったりするが、リアルタイムに情報を配信するブログの世界ではそんなことにかけている予算も時間もないのが一般的であるから必然の流れと言える。

ブロガーは自身のサイトに集まるコメントやトラフィックを解析しながら自身で軌道を修正したり、数あるオンラインマーケティングの手法を研究しながら自身を切磋琢磨する術を身に付けたりする以外に方法がないのである。これらは聞く通り過酷な環境であると思うが、自分で一人メディアをするようなものであるからそれは当然であり、従って成功した時に得られるものも全て自分のものにすることができる。今ソーシャルメディアは草創期であり、例えていうならばアメリカのゴールドラッシュ、あるいは日本の戦後の焼け野原のようなものである。巷にブログは数多くあれど、トラフィックを集めるサイトというのはそれほど多くない。アルファブロガーという和製英語があるが、これは「世間に影響力を及ぼすブログ」を書く人のことを指す。

このアルファブロガーという存在はオピニオンリーダーであり、これからのソーシャルメディアを担っていく旗手の予備軍である。「剣はペンよりも強し」ということを、今まで以上に体感できる社会がこれから10年以内に到来するであろう。佐々木氏を含めて多くの識者が指摘するように、マスメディアというものはなくなり、メディアの勢力図は今とまったく違ったものになっている可能性が大きい。一方従来のメディア陣営も完全に廃れるということではなく、恐らく形を変えて生き残りの道を模索するであろう。要は情報を分析・収集し、配信していく力というのがこれからどんどん求められる時代となり、文章能力や読解力に代表される国語能力の重要性が強くなっていくことだ。

では電子出版とソーシャルメディアがどう関連するかという話なのだが、ここには密接なつながりがもちろんある。よく言われる四大メディアのうち、新聞と雑誌は紙媒体であった、つまりこれらが電子出版につながることはよく理解されると思う。ではテレビとラジオはどうか、これらもYouTubeやUStreamに代表されるようなインターネット上での動画配信や、ポッドキャスト、それにオーディオブックという媒体に形を変えてメディア媒体として
存在していくであろう。新聞でいうところのテレビ欄に該当するものの一つが電子出版の有力コンテンツとなりうるし、雑誌などもインタラクティブな雑誌として電子出版で生まれ変わる。そして何よりKindleが始めたような課金性ブログの存在がブロガーというジャーナリストが自身の生計を立てていくことを強力に後押しするのである。

ブロガーを語るにおいて忘れてはならないことを一つ。それはこれまでのマスメディアと異なるのが、ブロガーは基本一匹狼であり、アメリカで主力となりつつあるHuffingtonPostのようなソーシャルメディアの例のように、トラフィックを集めるためやヴィジョンを共有する仲間で大きな旗を揚げるために(一時的に、と言っておこう)群れることはあっても大手の広告主に依存するようなことはしないことだ。それをすることで自身の言論が制限される可能性があることを一番よくわかっており、それによって生じたマスメディアに危機感を感じた者たちがソーシャルメディアの流れを支えているわけだから当然の帰結である。よってソーシャルメディアは読者からの直接的な支援によって成り立つことになるし、広告主がついたとしてもそれは読者をある程度直接支援するような形に様変わりしていくのである。(アマゾンやグーグルがブログ向けに提供している広告ツールがその一例である)

ブログをリーダーで読んだり、まとめて紙で読むことは生産性を高めることにも役立つ。というのもブログにはブログツールとしての独特の体裁があり、一気に読みこなすためにはあちこちクリックする必要があるし、印刷してもレイアウトが印刷用になっていないためスムーズにでてこない。つまりブログをまとめ読むために電子出版が用いられるということも要因の一つなのである。このように電子出版が大事な理由はソーシャルメディアにつながる過程として重要な意義があるということであり、それを見逃してリーダー論争や印税論争などに終始している現状の出版業界を見ていると、あまりの視野の狭さにげんなりすることが多いのである。

一部重複はあるかも知れないが、筆者の意力ブログでも過去に数度ソーシャルメディアについて書いたことがあるので、次にそれらのエントリーを転載してみる。(以下 割愛してリンクのみ)

近未来のソーシャルニュースネットワークを考える(1)(02/22/10)
近未来のソーシャルニュースネットワークを考える(2) (02/23/10)
ネットの未来を占うオープンからクローズドへ[ネットの開国談義とNING](02/04/10)
電子出版の行方を知る上での重要なポイントとアゴラブックス(03/06/10)

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立入 勝義 (Katsuyoshi Tachiiri) 作家・コンサルタント・経営者 株式会社 ウエスタンアベニュー代表 一般社団法人 日本大富豪連盟 代表理事 特定非営利活動法人 e場所 理事 日米二重生活。4女の父。元世銀コンサルタント。在米歴30年。 主な著書に「ADHDでよかった」(新潮新書)、「Uber革命の真実」「ソーシャルメディア革命」(共にDiscover21)など計六冊。

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  1. […] 第4章 電子出版がもたらすソーシャルメディアの夜明け3 – 電子ブック開国論 (40) | 立入勝義の意力(いちから)ブログ - 北米発IT情報・電子出版・ソーシャルメディア 2010.09.07 at 8:4 […]

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