スタバと大量閉店「黒船チェーン」の決定的な差 本国で成功したコンセプトを生かせてない (東洋経済ONLINE)という記事を読んだ。東洋経済は最近筆者が常々注目しているメディアである。オンラインメディアにありがちな、奇をてらうだけの中身スカスカな文章ではなく、しっかりした視点で書かれている記事がとても多く、編集スタッフの意気込みを感じる。奇抜な見出しだけでアクセスを集める手法はもう古く、中身がないとすぐに読者は離れてしまう。(ユニークな見出しで中身も良い、というのが一番いいのだろうが)
ニュースピックスでも取り上げたのだが、もう少しだけ掘り下げてみたい。
実は3社のチェーンはどれも、アメリカで成功したコンセプトが日本市場に文化として受け入れられていない。ここが共通の深層要因であり、乗り越えられていない魔物の正体です。
確かにそうとも言えるが、食生活や食習慣はそんなに簡単には変わらない。Newspicksでも指摘していた方がいたが、もう何十年もやっているマクドナルドですらハンバーガーを夕食に、という風には変更できていない。(しかしアメリカでは最近人気のラーメンで「持ち帰り」が増えているというのには逆にびっくりだ。変わる時には変わるという事例である)サブウェイやバーガーキングには何か足りない点があるのではないか。そしてドーナツはそもそも事業として難しいのではないか。(米国でも健康志向の人は食べていないはずだ)
気になったのが「決定的な差」という点で、ここで触れられていないのは黒船の本国である米国でもこの三社がうまくいっていないということだ。バーガーキングもサブウェイも全米で店舗数を減らしまくっているのは、こちら(米国)に住んでるとすぐにわかる。クリスピー・クリームも上場(最初にNASDAQ後にNYSE)していたのに利益を示せず2016年に非公開に戻っている。
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「成功者」であるスタバが提供しているのはモノだけではなく、「空間(Space)」にある。これが主に若い人たちに受けているというのは、彼らを取り巻く生活環境的に日本と欧米にあまり差が無いということなのかも知れない。また、日本では仕事で「お茶」する機会がかなり多いので、もともと市場としても大きな市場で、限定的なドーナツやサンドイッチ、ハンバーガーと比較するのはそもそも無理がある。
米国でバーガーキングが売れてない理由は、日本と大差なく、プレミアム感を打ち出してきているマックに対して差別化ができていないことが主因。
日本人と違ってDIYが好きな米国人だが、サブウェイはあまりにも旧態然としすぎていて、もう飽きられてきている。ジャージー・マイクやTOGOSなどの競合店の工夫に追いつけていない。日本では、ヘルシーな食べ物がサブウェイの主戦場である「ランチ」でとにかく選択肢が多い。これがまったくアメリカと違う。しかも女子の「お弁当」とも戦わなければならない。(アメリカではランチボックスにもサンドイッチをよくみる)またカスタマイズが面倒というのもその通りだろう、ランチタイムに分刻みの予定をこなさいといけない日本と、かなりルースなアメリカではまた違いすぎる。(せめてドリンクくらいおかわり無料にすればいいのに、なぜかベンディング・マシーンには「一人一杯のみ」などと張り紙がしてあるのを見てびっくりした)
クリスピー・クリームの存在感は、こちらではそれほど変わっていない。アプリもあるし、無料ドーナツのサービスも復活した。しかし、いかんせん日米ではドーナツを食べる量が違いすぎる。ダース買いするのが前提なのだが、そんなに食べないし、持ち歩くのも車と違って大変だ。ドーナツは市場そのものが激減しているという記事もある。老舗のミスター・ドーナツでもドーナツ以外のアイテムに注力してなんとかやっているという状態なんだから仕方がない。
それに引き換え、スタバはリワードプログラム充実のアプリやドライブスルー、そしてプレミアム店舗など創意工夫を続けている。儲かっているからできるし、それができるから儲かり続ける。
バーガーキングもサブウェイも、米国市場ですもはやなくても皆困らないくらいのビジネス規模になっているという実態がある。味が問題というわけでもなく、市場競争に打ち勝てるだけの価値と差別化を提供できていないのである。本丸でも厳しいのだから、日本での展開に希望がもてなければ、早々に「戦略転換」という名の下に事業縮小するか撤退するしか道はなさそうだし、それが懸命な判断であろう。昨今大人気で高利益商材のボバ(タピオカ)ビジネスから学ぶことは多いのかも知れない。(ヤクザビジネスの温床になっているという指摘もあるが 苦笑)