今回の都知事選(6月20日開示・7月6日投開票)は混乱の極みと言わざるを得ない状況となっている。選挙戦が始まって以来、候補者たちは互いに攻撃し合い(といっても主に二人だが)、具体的な政策提言は二の次にされてきている。これは有権者にとって、非常に困惑させられる事態である。
まず、候補者の数が多すぎる。過去の選挙と比べても、今回は特に多い56名が立候補している(半分くらいNHK党だが)。それぞれが自身のビジョンや何らかの政策を掲げてはいるものの、その中身はどうにも薄く、具体性に欠けるものが多い(か具体的すぎて問題なやつもある)。大手メディアはすでに大半の泡沫候補者をスルーして小池・蓮舫・石丸・田母神の四名にフォーカスしているが、それも致し方ないことと言えよう。政見放送もいくつか見たが、見るに耐えないものも多い… ほんとに何これ。妨害にあまり触れると余計に勢力を助長することになるのでここでは敢えて詳細にふれずにおく。
また、メディアの報道も混乱を助長している側面がある。スキャンダルやゴシップにばかり焦点が当てられ、肝心の政策論争がなおざりにされている。ただでさえ2週間という短い選挙期間の中でこれでは、候補者の本質的な能力やビジョンを見極めることは困難であろう。そうこうしている間にもう選挙戦最後の週末を迎えている。
もちろんSNSの影響も無視できない。誤情報やデマが飛び交い、それが選挙の行方を左右しかねない状況になっている。SNS上での情報発信は重要だが、それが信頼性に欠ける情報であれば、むしろ有害である。Yahoo!コメントでも煽り合いが続いている。
支持率が低下していく一方の政権運営を背景に、今回の選挙では、有権者一人ひとりの責任が一層重く感じられる。我々は、候補者の表面的な言動やメディアの報道に惑わされず、冷静に情報を収集し、判断する必要がある。日本の首都である東京都の長である都知事は、いうまでもなく私たちの生活に直結する重要なポジションであり、その選出は慎重に行われなければならない。しかし東京都民は選挙リテラシーが高いと信じている。過去の選挙でも個性的なリーダーシップがもてはやされてきた感がある。作家だろうとコメンテーターだろうと教授だろうとお笑い出身だろうと関係なく「中身」で選んできたのであろう。
今から考えたら石原都知事に負けてしまった東国原候補が169万票を取ったってとんでもないことに感じる。だいたい1200万人の人口の50%が投票して600万票。200万あたりが当確ラインと言われているがどうなるのだろう。蓮舫・石丸両氏の選挙演説も賑わっているようで追随している感はある。ただいかんせん小池・蓮舫の二人がお互いをなじりあっている(一方的?)のが少ししつこく見えてしまうのは残念である。それに比べ石丸・田母神の男性陣がさっぱりしているように見えるし、与野党の戦いを都政に持ち込まない姿勢も評価できる。世論調査では石丸氏がじわじわ票を伸ばしているようである。(そんなこという権利や資格があるのか別にして)「絶対無理」ととある都議に断言されてしまったが、絶対とか軽はずみに口に出すべきではないだろう。
このカオスな状況を打破するためにも、我々有権者一人ひとりがしっかりと情報を見極め、自分の一票を大切に行使することが求められる。それこそが、より良い東京を築くための第一歩であると信じている。貴重なリソースである選挙掲示板を利用する方法については、選管がもっともっと議論して正しい運用方法を模索していくべきなのは言うまでもない。(そもそも公職選挙法自体がもはや過去の遺物である)
今回の都知事選が混乱から秩序へと変わり、有意義な政策論争が行われる選挙となることを切に願う。