D62 アカデミーヒルズ ライブラリートークでの講演

今日は今回の日本出張最後のイベントであるアカデミーヒルズでの講演がある日だった。
Dカウントも60を過ぎて、もう2ヶ月も日本にいることをしみじみと実感。

アカデミーヒルズは去年参加したMIT-EFJのビジネスプランコンテスト以来。

当日のイベントの情報

ライブラリーメンバーはリテラシーが高い方や向学心の旺盛な方が多いとのことで、少し硬めの話も追加した。CODEの著者レッシグの提唱したサイバースペース上の4つの制約条件を、私なりにソーシャルメディアの世界に転用して考えているというお話。

ソーシャルメディア上のルールとマナー

レッシグは市場、テクノロジー(コード)、規範、法律の4つの制約条件があると説明したが、ソーシャルメディアは基本的に「フリーでオープン」なものなので、市場の制約条件つまり価格は当てはまらない。

その代わりに私が重要視しているのは、リアルの世界での法律とは異なる「ルール」の存在である。
これは、例えばYouTubeに溢れる動画や、ブログに掲載されている画像を見ても分かるように、(既存の、あるいは旧時代の制約であるところの)法律には厳密にいうと抵触するが、慣習的に看過されている部分である。もちろんこれらはグレーゾーンであり、フェアユースの認められにくい日本では場合によると完全に黒なのだが、実際にそれらに対して監視が行き届かなかったり罰則が適用されにくい、しかし度を過ぎるとやはりルール違反となる。(ちなみに私はこないだの某民放局に対する電凸騒動は完全にルール違反であると思っている。あれの多くはただのいたずら電話だ)

ソーシャルメディアを利用する際には、これらのいわゆる「暗黙のルール」を理解して振る舞うことが重要である。そして、もちろん情報の受発信者同士であるユーザー間でも最低限の礼儀を尽くす必要がある。

ではこれらの「ルール」と「マナー」が守られることとどうなるか? 一言でいうとそれは議論の成熟を意味し、メディアそのものの存在意義が認知されるということになる。そうして初めて、その外側にある法律や社会に影響力をもたらすことができるのである。スポーツや格闘技は、ルールが厳しければ厳しいほど面白い。そうしてこそ、戦う者もジャッジもスキルを上げていくことができるのである。
(私見だが、格闘技の中でも最も完成された形態の一つはボクシングだと思っている。しかし、ボクシングはあまりにも制約が多いため、トップランカーといえど、異種格闘技戦だとボロボロになる。相撲も同様。しかし、それはそれで構わない)

既存のソーシャルメディアでいうと、2chの掲示板は残念ながらこの「ルール」と「マナー」が守られない場であり、よって社会的な認知は極めて低い。反対にウィキペディアはかなり厳格なルールと確固たる管理コミュニティが存在することで、ソーシャルメディアの中ではかなり熟成された議論が存在する場である。(もちろん幼稚な議論や悪戯も多いが、それはフリーである限りつきまとう問題である)今、この点で端境にあるのがツイッターだと私は思っている。日本語は英語に比べて140文字で伝達できる情報量が多いため、日本のツイッターでは余計な喧嘩も多いと感じる。これは、一般的な機能としての「情報」と「センチメント」の伝達に加えて、日本語では「コンテクスト」が伝達できてしまうからではないかと思っている。当然、それによって伝えられる内容も深まるし、逆に読み違いによるトラブルも起こってしまう。

講演風景+宣伝(笑)

講演時間は1時間、質疑応答に30分でその後は歓談と名刺交換の時間。講演後のアンケートで「もっと話が聞きたかった」という声が多かったのは嬉しい限りだ。

講演のテーマになった近著「検証 東日本大震災 そのときソーシャルメディアは何を伝えたか?」はソーシャルメディア革命に比べると立ち上がりが遅かったようだが、今回このようなイベントをたくさんもてて、あちこちでプロモーションできたので少しは挽回できたかも知れないなぁ。

講演後はディスカヴァー21のスタッフの皆さんと打ち上げ。今日の私にとっての最大のヒットは実はディスカヴァーの社長室のOさんが私と同じ高校の同じ国際科の後輩だったということを発見したことだった。世の中狭いなぁ。(参加した皆さんがやたら高学歴だったのもびっくり。私は日本の受験では見事な落伍者だから、少し気が引けたのはここだけの話 笑)

立入 勝義 (Katsuyoshi Tachiiri) 作家・コンサルタント・経営者 株式会社ウエスタンアベニュー代表 一般社団法人 日本大富豪連盟 代表理事 特定非営利活動法人 e場所 理事 日米二重生活。4女の父。在米歴20年以上。 主な著書に「ADHDでよかった」(新潮新書)、「Uber革命の真実」「ソーシャルメディア革命」(ともにDiscover21)など計六冊を上梓。