Twitterは140文字以内の短いテキストで「今何をしているか」を知人や友人あるいはその他の人に伝えることを主眼にしたウェブサービスで2006年7月にObvious社により立ち上げられた。(日本ではデジタルガレージ社が出資するとともに日本語版の開発で提携していることが知られている) この新ITサービスも立ち上がった時はすごい勢いで盛り上がっていたが、しばらくしてから他のWeb2.0やSNSと同様に動きが鎮静化していたと思っていた。
が、ここに来てにわかにブームが再燃しているようで、この過去数ヶ月というもの、とにかくあちこちでその名前を聞くようになった。私個人の実感としてはフェイスブックはもはや「常識」となり、マイスペースは一部のアート志向の若者やクリエイターが活動をするに留まり、Twitterではとりあえず有名人をフォローするという感じ。TVショーの有名ホストであるオプラが50万人を超えるFollowerを集めたとか、彼女の最初の発言(Tweet)は何か、といった話題がいろんなメディアで大きく取り上げられた。
(参考:Twitterで注目を集めている著名人)
バラック・オバマ
オプラ (Oprah Winfrey)
どこぞの著名アルファブロガーも欧州でのIT系の会議で「Web2.0は死んだ。これからはTwitterだ!」と豪語したというが、ここにきてのこの熱気には何か腑に落ちないものを感じる。なんで今更!?という感じである。
(参考リンク:ウェブ2.0は死んだ!?
急にあちこちで同じタイミングで騒ぎ出すこの騒ぎの背後に、いわゆるアナログな広告代理店系の宣伝活動なようなものに代表されるような大衆心理操作を感じるからだ。ここ最近の大不況でアメリカでは外出せずにTVを見る人が増えているといいTVコマーシャル産業にも活気がでてきているという。野球(MLB)やバスケ(NBA)市場もかなり人気だそうだ、ゴルフ産業は低迷しているといわれているが、プレイしている人は減っているものの、TV観戦は依然盛んだと思うし、恐らく先日のマスターズ中継などはむしろ去年よりも注目を浴びたのではないだろうか?(iphoneでマスターズ専用のAppが出ていたのには驚いた) 今回の盛り上がりはTVやラジオといった旧マスメディアが牽引している部分が多いのが特徴的である、というのもマイスペースやフェイスブックなどのサービスが盛り上がったのはあくまでもネット上で、メディア(主にWSJと雑誌)はそれを喧伝していたに過ぎない。というのもマイスペースやフェイスブックが盛り上がったところで、TVやラジオとの相乗効果が得られるというよりはむしろ注意(時間)がいってしまうことのほうが多いからだ。この点で、増え続けてきた一般市民のネットへのアクセス時間は既存メディアには脅威であったには違いない。
では何が腑に落ちないかというと、自己の作品やプロフィールを積極的にアピールできるマイスペースやフェイスブック、Linked InなどのSNSとは異なり、Twitter上では自身の情報発信は近況報告とかコメントに制限され、それ以外の活動といえばあくまでもすでに知っている誰か、あるいは興味をもっている誰かを追いかけるという受動的な活動が主になりやすいということである。つまりマイスペースであったような仮想空間上のアイドルやスターみたいなのがTwitterでは成り立ちにくい。TVやラジオ、本、雑誌といった既成のマスメディアに追随する形になってしまうということで、なんだかせっかく進んできた時計が少し遡ってしまったような感がある。それもメッセージ性の強いブログとは異なり、Twitterのコメントの多くは感性的なものである。これは逆にいうと扇動しやすいということだ。リアルタイムであることも大きなポイントで、iphoneなどの進化型スマートフォンの活躍が背後にあるのは間違いない。
俗にいうWeb2.0(実際に本当に2.0のサービスがあったかどうかはおいといて)ではユーザー参加に重点を置かれていたが、Twitterでの参加は主体的というよりは対象的、双方向の情報発信というよりは一方的なものになりがちではないか。少なくとも自身の例でいうと更新頻度は極端に低く、もっぱら他の人の「つぶやき」を眺めるだけのことが多い。Googleが最近非常に多くのアプリをGoogle Labなどで公開するようになり、多くのITベンチャーが成し遂げようとしていたことを無料で先に提供して市場を独占する傾向があると思うが、そのせいで最近アメリカでは一時に比べ威勢のいい新興ITベンチャーの名前を聞くことがなくなった。すでに脆弱性などが指摘されているTwitterが既成メディアに肩を並べる形でネット産業の牽引車となっていくのか、それともこのまま既成メディアを牽引していく「乗り物」になっていくのかどうかに注目している今日この頃である。