ChatGPTを体験してみて思ったこと(1)

自身に起こった三度目のAI革命

思うところあって、今年の夏にプログラミングを本格的に勉強しようと思い、日本で有名なオンライン学習プラットフォームに登録して、数週間Pythonを勉強してみた。なかなか良くできていて、サクサクと学習が進む。「最近は文系でもAIを使ってプログラミングを勉強する方多いですよ」という若き天才プログラマーの声に耳を傾けて自分なりにAIとの共存を図ってみた。ちょうどChatGPTがPlusでGPT4.0のサービスを提供し始めていたので、迷わず課金。実際使ってみて驚いた。物凄く役に立つ。

実は筆者がAIで衝撃を受けたのはこれで三度目である。最初は将棋のAIだった。「雲の上」の人々であったプロ棋士に並んだかと思えばあっという間に追い抜き、時の名人を倒してしまった。今では「人間 VS AI」の構図なんて成り立たないくらいの強さになった。囲碁の世界でも同じことが起きたし、ルールがより簡単なチェスの世界ではとっくの昔に起きていたことだが。

二回目は機械翻訳だ。Google翻訳なんてプロ翻訳家からしたら話にならないというレベルだったのは一昔前、文字通りディープラーニングを搭載したDeepLの登場によってあっという間に物凄いレベルに到達した。あのスピードと品質、日英翻訳においてプロと比較したデータなども出てきたが使い方によっては圧倒的なパフォーマンスを示すのはプロ翻訳家ならみんなわかっていることだろう。筆者も翻訳を事業として手掛けていたが、これにより翻訳のニーズは圧倒的に減少することが見込まれたので大縮小した。他にもいくつかあったAI翻訳エンジンなどすべてなぎ倒す勢いだったし、なにせ費用が安い。

ChatGPTとどう向き合うか

いざAIの時代だ、ChatGPTだと言ってもまだまだ生活レベルで使いこなしている人は少ない。筆者も最初はChatGPTの使い方なんかさっぱりわからず適当な質問をしたり、「日本大富豪連盟とは?」とか質問してみて知名度の低さを嘆いたりしていたレベルだった。先述のプログラミングの件で力を借りる前に感銘を受けたのはエクセル関数についての質問だった。筆者は購買職が人生最初のキャリアだったので、エクセルの腕には少し自信があったが本当に驚かされた。もう悩む必要が一切無くなったではないか。VBAまで全部教えてくれる。最近はGoogle Spread Sheetを使うことも増えたが、それも全く問題ない。まさに万能アシスタントである。契約書のドラフトなんかも瞬時に作成してくれる。仕事に大活躍である。

プログラミングでどう使ったかということだが、まず自分で昔から開発したかったアプリをPythonで作ることにした。初心者が躓きやすいいわゆる「環境構築」のところから全部教えてもらうことができ大変助かる。そして、何よりエラーが出た時にそのコードを貼り付けるだけで問題解決の糸口を与えてくれる。もちろん簡単にいかない時もある。AIの回答が堂々巡りになって一つのバグ潰しに30時間かけたこともある。しかしこれまではエラーが出てもそれをGoogle検索にかけて、せいぜいStack Overflowで似たような回答を探すくらいしかできなかったことを考えると異次元のヘルプである。

そうこうして、できたアプリはPython + Flask でできた新型星占いのアプリだが、このUIを改修してもらおうとプログラマー兼デザイナーの優秀な友人に相談しにいったら、フロントエンドをReactにしろという。(直接ユーザーが触れるUIやUXに関係する部分がざっくりいうとフロントエンド、サーバーとかDBに関係してくる部分がバックエンドである)ReactはJava Scriptなのだが、これは全く勉強していないから困った。しかし同じようにChatGPTに聞きながらやることにしたらなんと3日で移管が終わってしまった。Java Scriptは一切勉強していなかったにも関わらず、である。結局その時はPython APIの部分がうまく連携できずReact(JSやらNodeJS)だけで完結してしまった。ホスティングはAWSだったが、みんなVercelが良いというのでそちらにした。ここで50手前のおじさんエンジニアは晴れてプロンプトエンジニアになる道を見出した。全部AIに書かせるのが基本スタイルなので、逆に言語知らずなのである。

これは「ほんやくコンニャク」の世界にだいぶ近づいてきたという実感がある。思えば将棋AIを使えばルールを知らない人でもプロ棋士を倒せる可能性があるし、DeepLをうまく使えばプロ翻訳家顔負けのパフォーマンスを全く英語ができない人でも発揮できる可能性はる。将棋の世界でも翻訳の世界でもAIとの共存共栄はとっくに始まっていて、革命的な市場の変化に対して人間が先に進む道を頑張って見出している。

産業革命の頃、ラッダイト運動というのがあったが、同じようにAIが仕事を奪うと危惧する人たちも増え、ハリウッドでは俳優や脚本家がデモを行ったりもした。時代は大きく移り変わっていくが、これからの若者にとってAIとの共生はもはや避けては通れない。ちょうど我々が大学時代にインターネットに触れたのと同じかそれ以上の衝撃を十分に持っている。(続く)

立入 勝義 (Katsuyoshi Tachiiri) 作家・コンサルタント・経営者 株式会社ウエスタンアベニュー代表 一般社団法人 日本大富豪連盟 代表理事 特定非営利活動法人 e場所 理事 日米二重生活。4女の父。在米歴20年以上。 主な著書に「ADHDでよかった」(新潮新書)、「Uber革命の真実」「ソーシャルメディア革命」(ともにDiscover21)など計六冊を上梓。