ソーシャルゲームの今後 (1)

先日も書いたように、ソーシャルゲーム会社は日本で隆盛を誇っている。DeNAやGREE、そしてMixiもこぞって北米に進出しており、それぞれの思惑で展開を進めているようだ。

日本ではもともと存在していたガラケー向けの携帯ゲームで課金が浸透していた、つまりユーザーがお金を払うことに抵抗感が少なかったことから有料制ソーシャルゲームへの移行はスムーズだった。アバターなどにお金をかける勢いも半端無くすごいのは、日本にいる間に体感したことだ。一方、アメリカでもフェイスブックがソーシャルゲームを大流行させたのは間違いなく最大手のZynga は急成長を遂げている。
ZyngaのCrunch Baseプロフィール

しかし、もともとアメリカの携帯ユーザーはそれほどモバイルゲームには執着していなかった。フェイスブックのゲームも、スパム的な要素が強くなってくるにつれて、ユーザーは離れていく。何より、そもそもその定義からユーザーは「カジュアル」であり、リテンションが弱いのだから仕方ない。この辺りは、私自身も以前MMORPGのローカライズを手がけた時に痛感したことだ。

ソーシャルを含めたオンラインゲームのポイント、それは時間の奪い合いである。
ソーシャルゲームは課金が難しく、現在の主流はインゲームのポイント制課金である。これは日本の出会い系サイトなどでも慣れ親しまれている手法のようだ。しかし、誰もが有料でゲームを買うわけじゃない、というか多くの人は買わないので、何とか無料でユーザーにDLしてもらい、長く続けていくなかでゲームを気に入ったコアユーザーにポイントを買ってもらう。(システム的には「時間をお金で買う」手法が用いられる。これにより、新規参入のプレイヤーも少しお金を払うことですでに進んでいる他のコアゲーマーに追いつくことができる)そこで、様々な工夫が凝らされるようになる。最近では「カイブツクロニクル」で有名なAdwaysのように、ゲーム内広告で他の自社ゲームに誘導する手法が流行ってきているようだ。確かにこれは効率がいい。ソーシャルゲームをやっていると、結局無料プレイヤーは多くの「待ち時間」を過ごすことになる。カイブツの場合は体力回復である。(ポイントを使うと回復アイテムが買える)これまではこの「待ち時間」が諸刃の剣だった。その間に、ユーザーの溜飲が下がったり、他のゲームに移動されたりするからである。

かくして、ソーシャルゲームのユーザーはいろんなゲームを次から次へと試しては、ダルくなってきたところ(時間の費用対効果が悪くなってきたところ)で次のゲームに移行するということになる。ロイヤリティもへったくれもあったものではない。ユーザーの時間は限られており、特に日本では通勤時の時間がそれに充てられることは日本の皆さんがご存知の通り。だったら、自社のゲームに誘導しようというものだ。一見、この複数ゲームのプレイは効率が良い。私も現在カイブツクロニクルと「煙に巻いたらさようなら」を同時進行で進めている。以前はKingdom Conquest もやっていたが、有名なFacebook Connect のバグが出た時にヤメてしまった。

日本ではDeNA(モバゲー)の代表作怪盗ロワイヤルと海賊ロワイヤルが、それぞれ10億円ずつを稼ぎ出すと言われているほど怪気炎を上げている状況なので、同じようにユーザーエクスペリエンスを北米にも移行したいと意気込むのはよく分かる。(人材獲得にも躍起になっているようだ)

しかし、このようなユーザーエクスペリエンスをアメリカに移行することは本当に可能なのだろうか? これから何回かに分けて、この点について論証してみたいと思う。検討すべきポイントはゲームの種類、課金方法、ゲームプレイの環境、端末の普及と携帯電話の料金体系の違いなど。確かに最近アメリカでもゲームの携帯課金の流れが進みつつあるように感じている。しかし、多くのユーザーは日本人ほど携帯ゲームにお金を使わないし、そんな時間もないというのがポイントである。また、ソーシャルゲームと携帯ゲーム、そしてカジュアルゲームは微妙に定義が違う存在であり、今後のソーシャルゲームを考える上で、その辺りについても踏み込む方が日本企業の北米進出の手助けになるのではないかと思ってみたり。

そもそも北米でソーシャルゲームは本当に儲けられるのだろうか?(続く)

<参考記事>
Zyngaが株式上場を急いだのはFacebookの先を超すため?(TC)
「ゲーム課金で月5万使うのは普通。他の趣味と同じ」「ネットゲームやめたプレイヤーが罪悪感持つように作れ」…開発者が講演

GALA FAQ

目指すは売上高4000億円 DeNA南場社長が示す「世界一」戦略 (IT Media)

立入 勝義 (Katsuyoshi Tachiiri) 作家・コンサルタント・経営者 株式会社ウエスタンアベニュー代表 一般社団法人 日本大富豪連盟 代表理事 特定非営利活動法人 e場所 理事 日米二重生活。4女の父。在米歴20年以上。 主な著書に「ADHDでよかった」(新潮新書)、「Uber革命の真実」「ソーシャルメディア革命」(ともにDiscover21)など計六冊を上梓。

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